どうも、ズワイガニです。
配信でジャズを聴いていると、アルバムに「Rudy Van Gelder Remaster」って書いてあるのを見たこと、ありませんか?
「え、誰?」「なんのバージョン?」「有名なの?」って思ったあなた、実はめちゃくちゃ鋭いです。
実はこのルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder)という人、「モダン・ジャズの音」を作り上げた伝説のレコーディング・エンジニアなんです!
伝説のレコーディング・エンジニア
ルディ・ヴァン・ゲルダーは1924年にアメリカで生まれた、もともとはメガネ技師。
そう、最初は目を扱う仕事をしていたのに、いつの間にか耳の仕事をするようになったというわけです。
彼は仕事の傍ら、趣味で録音機材をいじりはじめ、自宅のリビングを改造してスタジオにしてしまったんです。
しかも録音する相手がただの人じゃない。
- マイルス・デイヴィス
- セロニアス・モンク
- ジョン・コルトレーン
- アート・ブレイキー
- ホレス・シルヴァー
といった、ジャズの神様クラスの人たちが続々と彼の家に来て録音したのです!
そして1959年には、自分専用のスタジオを建設します。
場所はニュージャージー州のイングルウッド・クリフス。設計を手がけたのは、フランク・ロイド・ライトの弟子でもある建築家デヴィッド・ヘンシャル。
木の梁が美しい高い天井と、自然光が差し込む教会のような空間になっていて、この響きがブルーノート・サウンドを象徴するあの温かく立体的な音を生み出しました。
そんなすごいこだわりを持ったヴァン・ゲルダーの録音技術ですが、この技術は門外不出でした。
マイクの配置やミキシング方法などを誰にも明かさず、「どうやって録ってるんですか?」と聞かれても、にこっと笑って「ヒ・ミ・ツ」とお茶を濁される。まるで音を操る魔法使いのような人だったといわれています。
Blue Noteサウンドを作った男
ルディ・ヴァン・ゲルダーの名前が一躍有名になったのは、なんといってもブルーノート・レーベル。
ジャズ好きなら誰もが知るこのレーベルの黄金期(1950〜60年代)を支えたのが彼です。
ヴァン・ゲルダーの録音はとにかく音がクリアで、迫力がある。でも同時に温かみもあって、「そこに演奏者がいる!」って錯覚するようなリアルさなんです。
このブルーノートの音は、ファンの間では「RVGサウンド」と呼ばれるほど有名です。
SpotifyやApple Musicなどの配信でアルバムのタイトルに「Rudy Van Gelder Remaster」と明記されているのは、「ルディの録音=品質保証」みたいなものなんですね。
つまり、録音から何十年たっても「ルディの音で聴きたい!」というファンが世界中にいるということで、録音エンジニア界のブランドみたいになっているんです。
ルディ・ヴァン・ゲルダーのおすすめ録音5選!
ルディ・ヴァン・ゲルダーが手がけた中でも「これ聴いとけ!」という名盤を5つ紹介します!
初心者の方にも聴きやすいラインナップにしてみました!
The Sidewinder / リー・モーガン(1963年)
ヴァン・ゲルダーのスタジオで録音された作品の中でも、もっとも有名なヒット作のひとつ。キャッチーでファンキーなタイトル曲は、ブルーノートの新しい方向性を切り開いた1曲として知られています。
トランペットの芯のある抜け感と、リズム隊の立体的な空気感は、まさにヴァン・ゲルダーのマイク・ワークの妙。彼の録音が「硬質なのに温かい」と言われる理由が、この1枚に詰まっています。
Idle Moments / グラント・グリーン(1963年録音、1965年発表)
ギタリスト、グラント・グリーンの代表作。タイトル曲「Idle Moments」は約15分にわたるスロー・バラードで、その余白の美しさと残響の柔らかさがヴァン・ゲルダー録音の真骨頂。
特にギターの音像とピアノの距離感が絶妙で、空間を録るエンジニアとしてのヴァン・ゲルダーのセンスが際立ちます。
Point of Departure / アンドリュー・ヒル(1964年)
ブルーノートの中でも異色の前衛ジャズを代表する1枚。フリーに近い構成ながら、各楽器が明確に分離して聴こえるのはヴァン・ゲルダーの技術によるもの。
混沌とした音の中にも、明瞭さと空間的バランスがある。それがルディ・ヴァン・ゲルダーの録音の真髄です。
Speak No Evil / ウェイン・ショーター(1964年)
サックス奏者ウェイン・ショーターが放った傑作モード・ジャズ。コルトレーンの影響を受けつつも、より抽象的で詩的なサウンドが展開します。
ヴァン・ゲルダーの録音は、ショーターのサックスの深みと艶を余すところなく捉え、ドラムやベースが空間の奥行きとして響くように配置されています。後年、「Rudy Van Gelder Edition」としてリマスターされるなど、その音作りがいまも再評価されています。
Unity / ラリー・ヤング(1965年)
オルガン・ジャズの新境地を開いた名作。ソウルフルで重厚な音楽を、ヴァン・ゲルダーは驚くほどクリアに、立体的に収録しています。
特にオルガンと管楽器のバランス、低音の広がりが絶妙で、「これが60年代の録音!?」と思うほどの完成度。彼のスタジオが教会のような響きを持っていたことを実感できる1枚です。
彼がいなければ、ジャズは違う音になっていた
2016年、ルディ・ヴァン・ゲルダーは91歳でこの世を去りました。でも、彼の残した音は今も生き続けています。
マイルスの『Walkin’』も、コルトレーンの『A Love Supreme』も、アート・ブレイキーの『Moanin’』も、そのどれもがルディ・ヴァン・ゲルダーの耳を通って生まれた名盤です。
モダン・ジャズの歴史は、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音技術の進化の歴史と言っても過言ではないのではないでしょうか。
おわりに
これからジャズを聴くときは、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音かどうかも気にしてみてくださいね!ルディ・ヴァン・ゲルダーの名前が明記してあったら、音がいいジャズの証です。
ということで、今回紹介したのは、演奏者じゃなくても、ジャズの歴史を動かした男。ルディ・ヴァン・ゲルダーでした!

 
  
  
  
  