どうも、ズワイガニです。
今回は、ハービー・ハンコックが22歳のときにレコーディングした初リーダー作『Takin’ Off(テイキン・オフ)』を紹介します。
ジャズにあまり詳しくなくても、1曲目の『Watermelon Man(ウォーターメロン・マン)』はどこかで耳にしたことがあるかもです!明るくキャッチーなリフは、ジャンルの壁を超えて親しまれてきました。
ここでは、ブルーノートからの鮮烈なデビュー作となった本作の背景や魅力を解説します!
Takin’ Off / ハービー・ハンコック(1962年)
『テイキン・オフ』は、1962年5月28日に名門ヴァン・ゲルダー・スタジオで録音されたハービー・ハンコックの初リーダー・アルバムです。レーベルはブルーノート。
ここから彼のキャリアが大きく飛び立っていくことを思えば、「Takin’ Off(離陸)」というタイトルはすごくしっくりきますね。歴史を知っている我々からすれば、ああ、今まさに離陸するんだなって(笑)
レコーディング・メンバーは以下になります。
- ハービー・ハンコック(p)
- フレディ・ハバード(tp)
- デクスター・ゴードン(ts)
- ブッチ・ウォーレン(b)
- ビリー・ヒギンズ(ds)
初リーダー作にもかかわらず、当時すでに第一線で活躍していたミュージシャンが揃っています。
22歳の新人ピアニストを、ここまで手厚いメンバーで支えるのは異例で、それだけハンコックが高く評価されていた証拠でもあります。
ハンコックがデビューに至るまで
ハンコックは1960年頃からプロとして活動を開始し、ドナルド・バードのバンドで頭角を現します。
その演奏ぶりを見込んだバードの紹介で、ブルーノート創設者アルフレッド・ライオンと出会い、セッション・ピアニストとして多くの録音に参加しました。
約2年間の経験を経て、ついに自らの名義でレコーディングへと至ったわけです。
まさに、機は熟したタイミングでのリーダー・デビューです。機熟。
全曲ハンコックのオリジナル楽曲
本作が特異なのは、収録曲がすべてハンコックの作曲によるものだという点です。
とくに1曲目『ウォーターメロン・マン』は、その後何十ものアーティストにカバーされ、ハンコック自身も1973年『Head Hunters』でファンク・アレンジへ大胆にリメイクしました。「同じ曲なのに、ここまで変わるのか」と驚くほど進化したヴァージョンです。
デビュー当時から作曲家としても優秀だったんですね。22歳の時点でこの完成度の曲を書いていることを考えると、のちの幅広い活躍をすでに予見させるような才能が感じられます。
デクスター・ゴードンとフレディ・ハバードの存在感
ここで特に注目したいのが、デクスター・ゴードンの参加です。
1960年代初頭、ゴードンは薬物問題からの復帰期にあり、本作で聴ける彼のテナーは再び軌道に乗り始めた時期の姿そのもので、力強く、朗々としたフレーズはアルバムの推進力になっています。
一方のフレディ・ハバードは、ブルーノートでリーダー作を多数リリースしていた絶頂期なんです。
勢いのあるトランペットと、若いハンコックの柔軟なピアノの掛け合いは、本作の大きな聴きどころになっています。
おわりに
このアルバムが録音された翌年、1963年にハンコックはマイルス・デイヴィスの第二期クインテットに抜擢され、一躍モダン・ジャズ界の中心人物へと成長していきます。
『テイキン・オフ』を聴くと、その未来を切り開くエネルギーやセンスがすでに芽生えていたことがよく分かります。
ブルーノート初期のハンコック、フロント陣の魅力、名スタジオの空気感。どれをとっても「ここからすべてが始まった」と言いたくなる一枚です。
ぜひ、『テイキン・オフ』を聴いて、飛び立つ瞬間のハービー・ハンコックを味わってみてくださいね!


