どうも、ズワイガニです。
ジャズの歴史を振り返ると、破天荒という言葉がやたらと似合うプレイヤーが登場します。
型破りな言動、常識外れの振る舞い、周囲を振り回す強烈すぎる個性。正直、「この人と同じバンドはちょっと大変そうだな・・・」と思ってしまうような人物ばかりです。
でも、不思議なことに、そういうプレイヤーほど妙に魅力的だったりします。
真面目すぎず、行儀もよくない。ときには空気を読まないし、やりすぎることもある。
それでも、音が鳴った瞬間に「やっぱりこの人、最高だな」と思わせてくるのが音楽の面白いところです。
破天荒なプレイヤーだっていいじゃないか!
というわけで今回は、私が個人的に愛してやまない破天荒なジャズ・プレイヤーたちを紹介していこうと思います!
にわかジャズファン。この記事のライターで助手。好きな食べ物は蟹。これが本当のカニバる。
しったかJAZZ博士
しったかジャズファン。このブログの解説役である博士。持っている棒はプリッツだという噂が。
【4コマ漫画】破天荒な奴ら

破天荒なジャズ・プレイヤーは実在したの?
博士、破天荒なジャズ・プレイヤーって、さすがに話を盛ってる部分もありますよね?
いやあ……それがのう。わりと、そのまま残っとる話が多いんじゃよ。
え、本当に実在してたんですか・・・!
うむ。特にジャズが生まれて、広がっていった頃は、今よりもずっと空気が荒っぽくて、自由度も高かった。
自由度が高い、ですか。
良く言えばそうじゃな。演奏のスタイルも、人付き合いも、生活そのものも、今ほどこうあるべきという枠がなかったんじゃ。
なるほど・・・。たしかに日本でも昭和の芸能人エピソードって激しいですもんね。
だからな、普通に、無難にやっていたら、それはそれで埋もれてしまう。そう感じていたプレイヤーも多かったと思うぞ。
それで、だんだん尖っていった、と。
尖るしかなかったんじゃ、という方が近いかもしれんのう。音楽的にも、人間的にも、強い色を持たないと、自分が何者なのか示せなかった時代じゃ。
なんかダウンタウンに憧れてNSCに入った頃の若手芸人みたいですね。
ただ、全員が戦略的に尖っていたわけではない。中には最初から、どう頑張っても普通になれん、いわば天然素材の破天荒も、確実におったと思うぞ。
て、天然もののヤバいやつ・・・(ゴクリ)
だからというかなんというか、歴史に名前が残っているプレイヤーほど、演奏以前に「この人、ちょっとクセが強いな」という印象がある気がせんか?
言われてみれば、クセ、強そう・・・。
ただし誤解してはいかん。破天荒だから評価されたわけではない。クセの強さと音楽性が、たまたま同じ人の中に同居していたんじゃ。
人格が派手だから有名になった、という話ではないんですね。
うむ。結果として、強烈な個性と独自の音楽が結びつき、後世から見ると伝説に見える、というだけの話じゃな。
破天荒なジャズ・ミュージシャンたち
じゃあ次はいよいよ、具体的に破天荒なプレイヤーを教えてください!
うむ。エピソードを聞いて、天然ものかどうか、じっくり見極めてくれい。
破天荒ミュージシャン①:セロニアス・モンク
やはり最初はこの人じゃな。セロニアス・モンク。
破天荒というか、クセつよの代表格みたいな人ですよね。
うむ。最初は変わったピアニストという印象で済むんじゃがな。
帽子に独特の服装、無言で登場して、急に踊り出したり。
そのあたりまでは、「まあ、クセが強い人じゃな」で済む話じゃ。
ですよね。
ところがどっこい、話を掘り下げていくと、そう単純でもない。
というと?
日本のテレビ番組に出たときの話を知っとるか。
なんですかそれ?
真夏の日本で、いつもの分厚いコートに帽子という、どう考えても暑すぎる格好のままスタジオ入り。
その時点で不安しかない。
そのまま演奏を始めて、案の定、汗だく。鍵盤に汗が落ちるほどの状態で、最後まで全力で弾ききったそうじゃ。
それだけでも十分すごいですけど。
演奏後、番組側のスタッフがピアノを見たら、どうも様子がおかしい。
まさか・・・!?
使い物にならんくなっていたそうじゃ。
破天荒じゃーーーん!!!
モンクは頑固で真面目。じゃがその真面目さが、ことごとく規格外の方向に突き抜けてしまった男なんじゃよ。
これは天然ものやでえ。
破天荒ミュージシャン②:チャールズ・ミンガス
次のプレイヤーは誰ですか?
感情がそのまま音になる男、チャールズ・ミンガスじゃな。
ああ、名前を聞いただけで、なんとなく穏やかじゃない気配がします。
勘がいいのう。ミンガスは、感情の振れ幅がとにかく大きい男じゃった。
ああそうか、理解しました。破天荒にも色々形があるんですね。今回は・・・。
激情型じゃな。喜びも怒りも悲しみも、全部そのまま音に出てしまう。
それ、コントロールできないと大変そうですよ〜。
実際、大変だったそうじゃ。リハーサル中に機嫌を損ねて、突然演奏を止めることもあったし。しかも、止めるだけならまだしも、共演者にその場で説教を始めることもあったそうじゃ。
現場が地獄やあ・・・(遠い目)
じゃがな、ミンガスが怒るのは、たいてい音楽のことじゃ。
性格が悪い、とはちょっと違う?
うむ。「今の音は嘘だ」「本気じゃない」そう感じたときに、感情が抑えきれんかったんじゃ。
音楽に対して、まっすぐすぎたんですね。でも博士、ミンガスって、演奏中に事件を起こした話も多いですよね。
有名なのは、ステージ上で怒りが爆発して、楽器を放り投げた、という話じゃな。
それ、普通に危ないやつでは・・・。
そうじゃな。今なら確実に問題になる(笑)
笑い事ちゃうで!ミンガスも破天荒ですねえ。
でも、その怒りが冷めた後に生まれた曲は、驚くほど繊細で、美しいんじゃあ・・・。
ギャップがすごい。
ミンガスの音楽には、怒りも、優しさも、葛藤も、全部入っておる。隠そうとしなかったんじゃな。
天然ものですか?それとも自覚あり?
ほぼ自覚ありじゃ。ただ、止め方が分からんかった、という方が正しいかもしれん。
感情がダダ漏れの天才だったんですね。
破天荒ミュージシャン③:チャーリー・パーカー
次はどんなタイプですか?
次は破滅型じゃ。破滅型と言えばジャズの歴史には、いくらでも名前が挙がる人がいるな。
バド・パウエル、チェット・ベイカー、アート・ペッパー・・・このあたりはすぐ思い浮かびますね。
その中でも彼は元祖にしてラスボス。そう、チャーリー・パーカーじゃ。
やっぱりパーカーは外せないですね。
破滅型ジャズマンの話をするなら、この男を抜きにするのは無理じゃ。後に続く破滅型たちの、だいたいの要素を、すでに一通りやっておる。
先駆者すぎません?
有名なのは、生活に困って自分のサックスを売ってしまった話じゃな。
それ、ミュージシャン的に致命的じゃないですか。
普通ならな。じゃがパーカーは、仮もののサックスを手に入れて、また歴史的な演奏をしてしまう。
意味が分からない・・・。
破滅型の怖いところじゃ。生活は崩壊しておるのに、音楽だけは壊れないという・・・。
他にもエピソード、山ほどありますよね。
ホテルで火事を起こした話、体調が最悪でもステージに上がった話など枚挙にいとまがない。
笑えないのに、どこか伝説感があるんですよね。
それは、音を聴けば、誰もが納得してしまうから。チャーリー・パーカーは、自分の人生を削りながら、ジャズの言葉そのものを書き換えてしまった男なんじゃ。
破天荒という言葉が一番似合うのはパーカーなのかもしれませんね。
破天荒ミュージシャン④:セシル・テイラー
パーカーを出してしまったら、次はもういないんじゃないですか?
おる。シラフで一番怖いタイプかもしれんので、最後に紹介させてくれい。
シラフで一番怖いタイプって言い方が怖いわ。で、誰なんですか?
セシル・テイラーじゃ。
名前は聞いたことあります。ピアノがめちゃくちゃ激しい人ですよね。
激しい、という言葉では足りん。あれはもう、ピアノとの肉弾戦じゃ。
(笑)弾くというより、叩いてますもんね。
本人はいたって真面目じゃ。即興も、構成も、すべて頭の中で組み立てておる。
え、計算してあれなんですか?
そうじゃ。思考回路があのスピードと密度なんじゃと思う。
それはそれでヤバいですね・・・。
ライヴでは、数十分から時には数時間、休まず即興を続けることもあったそうじゃ。
体力どうなってるんですか。
しかも演奏前に、突然ポエムを朗読し始めたりする。
情報量が多い。
彼の場合、理性が暴走した結果の破天荒と言っていいかも。
地力強すぎでしょ。
おわりに
いかがでしたか?極端に破天荒すぎるミュージシャンを紹介したかったのですが、今回は少しマイルドになってしまったかもしれません(反省)
でも、演奏している人が、どんな人間だったのかを知ると、ジャズが難しい音楽だとしても、急に身近に感じませんか?
破天荒なエピソードを知ったあとに音を聴くと、「なるほど、これをこの人が演奏しているのか」と思えたり、それまでピンと来なかった演奏が、急に面白く感じることもあります。
こうやって、自分なりの「面白がりポイント」を見つけていくのも、音楽の楽しい聴き方の一つだと思います。
まあ結局のところのう、音を聴いて「なんか好きじゃな」と思えたら、それで十分なんじゃよ。byわし。
4コマ作者
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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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