どうも、ズワイガニです。
ジャズの世界には「伝説」と呼ばれるエピソードが数多く残されていますが、その多くは酒や破天荒な生活による失敗談だったりします。
しかし、今回スポットを当てるのは、もっと人間臭い衝突のお話です。
一方は、ジャズ界の至宝であり、常にエレガントな立ち振る舞いから「公爵(デューク)」と称えられたデューク・エリントン。もう一方は、魂を削るような重厚なベースを弾き、感情を爆発させることから「怒れる男」と呼ばれたチャールズ・ミンガス。
この、水と油・・・というよりは、「高級シルク」と「むき出しの鉄鋼」のような二人が同じバンドにいた時期があると言ったら、皆さんはどう思うでしょうか?
「絶対に何かが起きる」と予感したあなたは、もう立派なジャズ・ファンです。
今回は、そんな二人の間に起きた「ジャズ史上最も優雅で、最も冷酷なクビ宣告」について紐解いていきましょう!
にわかジャズファン。この記事のライターで助手。蟹お面。
しったかJAZZ博士
しったかジャズファン。このブログの解説役である博士。赤眼鏡。
【4コマ漫画】許せないこと

公爵と狂犬、まさかの共演
今回のテーマは、デューク・エリントンとチャールズ・ミンガス。この二人の組み合わせは本当に凄まじいんじゃ。
エリントンといえば、ジャズ界の神様みたいな人ですよね。いつもタキシードをピシッと着て、ピアノを優雅に弾いているイメージです。
その通り。「公爵」のあだ名にふさわしく、言葉遣いも丁寧で、どんなトラブルが起きても「愛してるよ(I Love You Madly)」と微笑んでかわすような、寛容さの塊のような男じゃ。
対するミンガスは・・・。
感情の起伏が激しい「激情型」の天才じゃ。彼はエリントンを音楽の神として崇拝しておった。いわば、憧れのアイドルのバンドに加入できたようなもんじゃな。
えっ、じゃあハッピーエンドじゃないですか!
ところが、1953年の話じゃが、ミンガスがエリントンの楽団にいたのは、わずか「4日間」だけだったと言われとる。
短っ! カップラーメンの待ち時間並みのスピード感でクビじゃないですか!
公爵がキレた?ジャズ界一「優雅な」クビ宣告
4日間で何があったら、あの仏のようなエリントンがキレるんですか?
きっかけは、楽屋での些細な言い合いじゃった。ミンガスと、トロンボーン奏者のファン・ティゾールという古参メンバーが衝突してな。
ああ、加入当初でもミンガスなら言い返しそう・・・。
言い返すどころか、ミンガスは怒り狂って、なんと「消防用の斧」を持ち出してティゾールを追い回したという説があるんじゃ。
斧!?ジャズの現場で斧はダメですよ!楽器持ってくださいよ!
ティゾールも負けておらん。ナイフで応戦しようとしたらしい。もはやジャズ楽団ではなくアクション映画の撮影現場じゃな。
そんな地獄絵図、エリントンはどう止めたんですか?
そこがエリントンの「公爵」たる所以じゃ。彼は騒動のあと、ミンガスのところへ歩み寄り、こう言ったそうじゃ。
「チャールズ、君の才能は素晴らしい。だが、私の楽団には君のような新しい刺激は少し強すぎるようだ。君にはもっと、君の才能にふさわしい、自分自身のバンドを作るべきだと思うんだ。」
えっ、めちゃくちゃ褒めてる?
これがエリントン流の「クビ宣告」じゃ。「君が凄すぎるから、うちの手に負えないよ。だから辞めてくれ」と、相手のプライドを傷つけずに、かつ光速で追い出す。
丁寧すぎて逆に怖いって!
それでも二人は惹かれ合う
でも、そんなひどい別れ方をして、二人の関係は終わっちゃったんですか?
それが面白いところでな。ミンガスはクビになってもエリントンへの尊敬を止めなかった。そして約10年後、二人は伝説的なレコーディングで再会するんじゃ。
えっ、共演したんですか!?
それがこのアルバムじゃ。
Money Jungle / デューク・エリントン (1963)
ピアノにデューク・エリントン、ベースにチャールズ・ミンガス、ドラムにマックス・ローチ。全員がリーダー級の、まさに「マネー・ジャングル(弱肉強食の世界)」のような盤じゃ。
ジャケットからして、バチバチに火花が散ってそうですね。
実際、録音中もミンガスは機嫌を損ねて「帰る!」と言い出したりしたそうじゃ。それをエリントンが「まあまあ」となだめて完成させた。
エリントンの猛獣使いスキルが上がってる・・・。
聴いてみるとわかるが、エリントンのピアノが驚くほど攻撃的なんじゃよ。ミンガスの荒々しいベースに触発されて、70歳近い老巨匠が若手のように暴れ回っておる。
お互いに許せない部分はあるけれど、音を出せば最高の相棒になっちゃう。これぞジャズの醍醐味ですね!
おわりに
いかがでしたか?
「公爵」エリントンと「狂犬」ミンガス。性格も育ちも真逆な二人ですが、どちらも「自分を曲げられない」という点では共通していたのかもしれません。
エリントンのような優雅な振る舞いも、ミンガスのような剥き出しの感情も、どちらもジャズという音楽を豊かにする大切な要素です。
もし皆さんの周りに「ちょっとこの人、個性が強すぎるな・・・」という人がいたら、心の中でエリントンになりきって、「君にはもっとふさわしい場所があるはずだよ」と唱えてみてください。少しだけ、ジャズな気分で優しくなれる・・・かもしれません(笑)
4コマ作者
502
商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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