どうも、ズワイガニです。
夜空を見上げると、そこにはいつも月が浮かんでいます。
古くから詩や歌の題材になってきた月ですが、ジャズの世界で「月」といえば、真っ先にこの曲を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(私を月に連れてって)』
お洒落なバーで流れていたり、あのアニメのエンディング曲として耳にしたり、実はNASAの月面着陸ミッションでも流されていたりと、まさに宇宙規模で愛されているスタンダード・ナンバーです。
今回は、そんなロマンチックな名曲の裏側に迫ってみたいと思います。
にわかジャズファン。この記事のライターで助手。スヌーピーも大好き。
しったかJAZZ博士
しったかジャズファン。このブログの解説役である博士。作品としてスヌーピーを語るとき、ピーナッツと言い通ぶってくる。
【4コマ漫画】私を月に連れてって

『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』は最初からジャズじゃなかった?
博士、4コマでも話しましたけど、リラックマがJAXAの公式宇宙服を着ていたのには驚きました。宇宙ってやっぱり男のロマンですよね!
うむ。そしてジャズマンにとっても、宇宙や月は最高のインスピレーションの源なんじゃ。『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』はその筆頭と言えるのう。
この曲、あまりにも有名すぎて、最初からジャズの巨匠が作った曲だと思ってました。
実はそうではないんじゃ。1954年にバート・ハワードという作詞作曲家が作ったんじゃが、最初は『In Other Words(言い換えれば)』というタイトルだったんじゃよ。
えっ、地味!全然ロマンチックじゃないですね。どんな歌詞だったんですか?
ちょっとこの部分を見てごらん。
Fly me to the moon And let me play among the stars (私を月まで連れてって 星たちの間で遊ばせて)
・・・中略・・・
In other words, hold my hand (つまり、私の手を握ってほしいの) In other words, darling, kiss me (言い換えれば、ねぇ、キスして)
In other words, please be true (つまり、誠実でいてほしいの) In other words, I love you (言い換えれば……あなたを愛してる)
『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』の歌詞から抜粋
あ!本当だ!「In other words(言い換えれば)」が連発されてる!
そうなんじゃ。歌詞をよく聞くと、「I love you」という言葉を「In other words…」と何度も言い換えておるじゃろ?だから当初はそのタイトルだったんじゃが、冒頭の「Fly me to the moon」というフレーズがあまりに強烈で、世間がそっちのタイトルで呼び始めてしまったんじゃな。
今のタイトルの方が絶対いいです(笑)最初はワルツ(3拍子)だったっていう噂も聞いたことがありますが・・・。
その通り!もともとはゆったりとした3拍子のキャバレー・ソング風だったんじゃ。それを今のようなお洒落な4拍子のスウィング・ジャズに変えて世界的にヒットさせたのが、ジョー・ハーネルという編曲家なんじゃよ。
宇宙へ行った最初の曲
博士、さっきチラッと言いましたけど、この曲って本当に宇宙で流れたんですか?
そうなんじゃ。1960年代、アメリカの「アポロ計画」の時に、実際に月へ行く宇宙船の中で流されたんじゃよ。
かっこよすぎる!誰のヴァージョンが流れたんですか?
やはりこの人、フランク・シナトラじゃ。1964年にカウント・ベイシー・オーケストラをバックに歌ったヴァージョンが、当時の宇宙飛行士たちのお気に入りだったんじゃな。
シナトラの声で「私を月に連れてって」なんて聴きながら月に向かうなんて、オシャレが過ぎますね。
アポロ11号が月面着陸した時も、カセットテープでこの曲が再生されていたという記録がある。まさに「人類で初めて月で鳴り響いた曲」と言っても過言ではないかもしれんのう。
これだけは聴いておきたい!名盤紹介
博士、初心者におすすめの「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」の名盤を教えてください!
よし、まずは王道から変化球まで、この3つを押さえておけば間違いないぞ。
It Might as Well Be Swing / フランク・シナトラ & カウント・ベイシー (1964)
先ほど話した、宇宙へ行ったヴァージョンが収録されているアルバムじゃ。
これぞジャズ!っていうゴージャスなホーンの音が最高ですね。
シナトラの余裕たっぷりの歌声と、ベイシー楽団の完璧なスウィング。これが正解と言ってもいいくらいの決定版じゃな。
The Complete Anita O’Day Verve-Clef Sessions / アニタ・オデイ (1999)
少し通なところでは、女性シンガーのアニタ・オデイも外せん。彼女が1963年に録音したボサノヴァ・アレンジのヴァージョンがこのコンプリート盤などで聴けるぞ。
あ、これお洒落ですね。軽快でちょっと小悪魔的な歌い方が素敵です。
そう。彼女独特のハスキー・ボイスと、遊び心のあるリズム感がたまらん。ボサノヴァの波に揺られるような心地よさがあって、夜のドライブなんかにも最高の一枚じゃぞ。
Out of the Afternoon / ロイ・ヘインズ (1962)
歌なしのインストゥルメンタルなら、ドラマーのロイ・ヘインズの盤を勧めるぞ。
ドラマーがリーダーのアルバムなんですね!激しいんですか?
いや、これが意外にも非常にエレガントなんじゃ。ローランド・カークという、鼻で笛を吹いたりする変幻自在のマルチ・リード奏者が参加しておって、実に色彩豊かな「月」を表現しておる。
現代でも愛される「月への憧れ」
この曲、アニメのエンディングとか、映画の挿入歌でもよく聞きますよね。
そうじゃな。日本では某有名SFアニメの影響で、若い世代にも圧倒的な知名度がある。ヴァージョン違いが何十種類も作られたりして、まさに世代を超えて愛されておる証拠じゃ。
ジャズって古い音楽だと思ってたけど、こうやって宇宙開発からアニメまで繋がっているのを知ると、すごく身近に感じます。
そうじゃ。ジャズは常にその時代の空気を取り込んで変化していく音楽じゃからな。1950年代の恋心から、60年代の宇宙への憧れ、そして現代のポップ・カルチャーまで、この一曲にすべてが詰まっておるとも言えるのう。
おわりに
いかがでしたか? 『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』という一曲の裏側には、恋人への熱い思いだけでなく、人類の宇宙への挑戦という壮大なストーリーが隠されていました。
ジャズには、同じ曲でも演奏する人によって「ロマンチックな夜の顔」になったり「軽快な宇宙旅行の顔」になったりと、無限の表情があります。
今夜はぜひ、窓から月を眺めながら、自分だけのお気に入りのヴァージョンを探してみてください。
もしかしたら、リラックマもどこかでこの曲を聴きながら、月へと思いを馳せているかもしれません(笑)
4コマ作者
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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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