どうも、ズワイガニです。
おしゃれなカフェで流れる音楽といえば、ボサ・ノヴァを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか?
そのイメージを世界に広めたアルバムが、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトの共演作『ゲッツ/ジルベルト』。
今回は、このアルバムがなぜ伝説と呼ばれるのか、その魅力に迫ります。
『Getz/Gilberto(ゲッツ/ジルベルト)』とは?
『Getz/Gilberto(ゲッツ/ジルベルト)』は、テナー・サックス奏者、スタン・ゲッツと、ブラジルのギタリスト兼シンガー、ジョアン・ジルベルトの連名で1963年にレコーディング、翌1964年に発売された歴史的名盤です。
メンバーは以下になります。
- スタン・ゲッツ(ts)
- ジョアン・ジルベルト(g,vo)
- アントニオ・カルロス・ジョビン(p)
- セバスチャン・ネト(b)
- ミルトン・バナナ(per)
- アストラッド・ジルベルト(vo)
ピアノにはボサ・ノヴァの生みの親、アントニオ・カルロス・ジョビン、パーカッションにはリズム感あふれるミルトン・バナナが参加し、まさにボサ・ノヴァの核とも言える布陣です。
このアルバムは、アメリカのジャズとブラジルの新しい音楽、ボサ・ノヴァが初めて本格的に融合した作品であり、世界中にボサ・ノヴァ・ブームを巻き起こしました。
1965年には、グラミー賞最優秀アルバム賞を受賞し、ジャズ作品として史上初の快挙を成し遂げました。また、同年に『イパネマの娘』も 最優秀レコード賞 を獲得し、実績から見ても一世を風靡したことが分かります。
『ゲッツ/ジルベルト』の収録曲と聴きどころ
アルバムには全8曲が収録されています(オリジナルLP)。特に有名なのは『イパネマの娘』ですが、どの曲も美しいメロディと独特のリズムが特徴です。
The Girl from Ipanema(イパネマの娘)
世界的ヒットを記録し、グラミー賞も受賞した超代表曲。アストラッドのアンニュイな歌声が印象的です。
Desafinado(デサフィナード)
ジョビンの代表曲のひとつ。タイトルは「音痴」という意味ですが、実際は洒落た皮肉になっています。
Corcovado (Quiet Nights of Quiet Stars)(コルコバード)
穏やかな夜の雰囲気を描く名曲。ジョアンとアストラッドの掛け合いが美しい。
いろんな音楽と融合させるスタン・ゲッツ
この1年前、スタン・ゲッツはギタリストのチャーリー・バードと共に録音したアルバム『Jazz Samba』を大ヒットさせていました。その成功をさらに発展させて生まれたのが『ゲッツ/ジルベルト』です。
ボサ・ノヴァを生み出したのは、ピアニストであり名作曲家でもあるアントニオ・カルロス・ジョビン。『イパネマの娘』を作曲したのもジョビンです。
そして、ボサ・ノヴァのギターに合わせて歌う独自のスタイルを確立したのがジョアン・ジルベルト。
スタン・ゲッツはこの二人に注目し、ジャズとボサ・ノヴァの融合を実現させたのです。
ちなみにですが、スタン・ゲッツがボサ・ノヴァをちゃんと理解していなかったと言われていて、レコーディングの雰囲気は最悪だったそうです(笑)
夫の付き添いだったアストラッド・ジルベルト
1曲目の『イパネマの娘』と5曲目の『コルコバード』は夫であるジョアン・ジルベルトの付き添いで来たアストラッド・ジルベルトが歌っています。
彼女は、当時22歳の主婦でした。
レコーディング当日、たまたま歌ったところ、あまりに出来がよく、そのままレコーディングしたという伝説があります。
しかし実際は、彼女自身による売り込みがあり、英語で歌える彼女に商業的価値を見出したプロデューサーが「飛び入り参加のハプニングであった」とする筋書きを書いたと言われています。
その後、『イパネマの娘』のシングル・バージョンでは、プロデューサーの判断でジョアンのパートをカットし、アストラッドが単独で歌っている形に編集されることに。
そして、アストラッドはこれを歌ったことで、爆発的に売れて大スターになり、結果的に自立してジョアンとは離婚してしまいました。人生って面白いですね(笑)
おまけ
スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトはこの後、カーネギー・ホールで公演を行い、それがライヴ・アルバムになっています。『ゲッツ/ジルベルト#2』として発売されていますが、この公演は両者が自分のバンドを連れてきての演奏だったそうです。
1976年には、『ゲッツ・ジルベルト・アゲイン』が発売されます。こちらは再びコラボしたスタジオ録音。前作ほどのインパクトはないものの、熟練した二人の円熟味が楽しめます。