ジョン・コルトレーンからの挑戦状『ジャイアント・ステップス』を聴く。【4コマ漫画付き記事】

JAZZあれこれ

ここはとある町の喫茶店。

レコードを聴きながら今日もマスターはつぶやく。

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【4コマ漫画】喫茶店マスターのつぶやき5

『ジャイアント・ステップス』の解説

『Giant Steps』 は、1960年に発表されたジョン・コルトレーン名義のアルバムです。本作は、コルトレーンがマイルス・デイヴィスやセロニアス・モンクとの共演を経て独自のスタイルを確立し始めた時期に制作され、コルトレーンの音楽的な進化を象徴するアルバムとなりました。

そのスタイルとは、シーツ・オブ・サウンドと呼ばれるもので、スケールやアルペジオを駆使して高速で音符を織り重ねるように吹き込む技法で、まさに怒涛のようなソロが展開されます。

中でも、タイトル曲『Giant Steps』の構成とハーモニーは当時としては驚異的な革新をもたらしました。曲の進行は、後にコルトレーン・チェンジと呼ばれるようになる急速かつ跳躍的なコード進行を特徴としています。従来のジャズでよく使われていた「II-V-I進行」は、自然な流れでコードが移り変わっていくスタイルです。しかし、『Giant Steps』では、全く異なる三つのキー(調)を次々に飛び移るようなコード進行が使われており、その動きは三全音(オクターブを3分割した音の間隔)を基にした対称的な構造になっています。例えるなら、まるで階段をジャンプしながら登るような感覚で、プレイヤーは瞬時に違うキーに切り替えて演奏しなければならず、非常に高度な演奏技術と音楽理論の理解が求められるのです。

興味深いのは、レコーディングに参加したピアニストのトミー・フラナガンが、複雑なコード進行に戸惑い、やや控えめな伴奏に終始している点です。これは、この作品が当時いかに突飛で革新的であったかを物語っています。

また、このアルバムには、『Naima』や『Cousin Mary』などのメロディアスで親しみやすい楽曲も含まれており、コルトレーンの霊的・抒情的な側面も垣間見ることができます。特に、『Naima』は、彼の最初の妻ナイーマに捧げられた美しいバラードで、後年まで彼のレパートリーに残る重要な楽曲となりました。

『Giant Steps』は、コルトレーンがその後に向かうスピリチュアルな探求や、より自由な即興表現への扉を開く前段階でありながら、すでに技術的にも理論的にも圧倒的な完成度を見せています。モダン・ジャズの新しい可能性を示したこの作品は、ジャズ史において、まさに「巨人の一歩」として燦然と輝いています。

4コマ作者

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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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