ジョン・コルトレーンの至極のバラード『Say It (Over and Over Again)』を聴く。【4コマ漫画付き記事】

JAZZあれこれ

ここはとある町の喫茶店。

レコードを聴きながら今日もマスターはつぶやく。

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【4コマ漫画】喫茶店マスターのつぶやき7

『Say It (Over and Over Again)』の解説

『Say It (Over and Over Again)』は、ジョン・コルトレーンが1962年に録音したアルバム『Ballads』の冒頭を飾る一曲です。もともとは1940年に映画音楽として書かれたポピュラー・ソングで、フランク・シナトラなども歌ったことのあるスタンダードな楽曲です。

当時のコルトレーンといえば、『Giant Steps』や『My Favorite Things』のような高度なハーモニーや革新的な即興演奏で知られていました。しかし、『Ballads』でのコルトレーンは、あえて技巧を抑え、旋律を丁寧に、まるで語りかけるように演奏します。

アルバムの収録曲の多くは一発録りであり、音楽評論家ジーン・リーズは、アルバムのライナーノーツで次のように述べています。

「彼らは楽譜店で購入した譜面を持参し、各曲について話し合い、使用するコード進行を書き出し、約30分間の簡単なリハーサルを行った後、録音に臨んだ。」

『Say It (Over and Over Again)』では、コルトレーンのテナー・サックスが柔らかく空間を漂い、マッコイ・タイナーの控えめなピアノ、ジミー・ギャリソンの低く温かいベース、エルヴィン・ジョーンズの繊細なブラシが、それぞれの居場所で寄り添いながら、静かな時間を紡いでいきます。

特筆すべきは、コルトレーンがメロディを大きく崩すことなく、それでいて自分らしさをしっかりと織り込んでいるところです。派手さはありませんが、一音一音に想いが込められているような、じんわりと心にしみてくる演奏。あくまでシンプルに、しかし深く──言葉で説明しきれない感情をこの曲から受け取っているように感じます。

そして、1960年代初頭の激動の空気の中で、あえてこうした静かな作品を残したというのは、コルトレーンの幅広い音楽性を物語る証でもあります。実際、コルトレーンのアルバムの中で『Ballads』はかなりカジュアルで聴きやすく、もしかするとインパルス!レコードの「分かりやすく売れる作品を」という要望に応えたのかもしれません。

過激な前衛的な音楽だけでなく、温かくて静かな音楽も届ける──『Say It (Over and Over Again)』は、そんなコルトレーンの誠実な姿勢があらわれた一曲なんです。

4コマ作者

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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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