どうも、ズワイガニです。
ジャズの世界では、強い存在感を持つあだ名がいくつも生まれてきました。
そこには、音楽性だけでなく、その人がどう見られていたかがはっきり表れています。
今回は、由来を知ると面白い、ジャズ・ミュージシャンのあだ名を小ネタ集として紹介していきます。
The Velvet Fog(ベルベットの霧)
まずはこのロマン全開なあだ名からいきましょう。
The Velvet Fogと呼ばれたのは、メル・トーメ。ベルベットのように滑らかで、霧のように柔らかく包み込む声質を、そのまま言葉にしたようなニックネームです。
メル・トーメは、シンガーとして知られていますが、作曲家・ドラマーとしても活動し、理論と感性を兼ね備えた多才なミュージシャンでした。
この呼び名は、ラジオDJによって付けられたものとされており、実は本人はあまり気に入っていなかったとも言われています。
それでも今では、この名前なしに語れないほど、彼の歌声を象徴する称号として定着しています。
Satchmo(サッチモ)
ジャズ界で最も有名なあだ名のひとつが、ルイ・アームストロングのSatchmoです。
ルイ・アームストロングは、ニューオーリンズ出身のトランペッターであり、ジャズのソロ文化を決定づけた存在。歌手としても唯一無二の声を持ち、ジャズを世界的な音楽へと押し上げた立役者です。
Satchmoは「Satchelmouth(カバンのように大きな口)」を縮めた呼び名など、由来の細部には諸説ありますが、特徴的な口元や豪快な歌い方を親しみを込めて表現したものとされています。
豪快なトランペット、しゃがれた声、そして太陽のような笑顔。Satchmoという呼び名には、彼の音楽と存在感がそのまま詰まっています。
The Chairman of the Board(取締役会長)
ジャズというよりショー・ビジネス寄りですが、外せないのがフランク・シナトラ。
フランク・シナトラは、ビッグ・バンド時代からキャリアを築き、歌手・俳優として20世紀のエンタメ界を代表するスターとなった人物です。ジャズとポップスの境界を軽々と越え、常に第一線に立ち続けました。
The Chairman of the Boardというあだ名は、長年にわたり音楽業界で圧倒的な影響力を持ち続けた存在感を象徴する呼び名として定着しました。
ステージに立つだけで空気を支配するその姿は、まさに会長職。音楽の実力だけでなく、スター性やカリスマ性までも含めた、シナトラらしいあだ名です。
The Duke(公爵)
デューク・エリントンのあだ名は、名前そのものがすでに貴族級。
デューク・エリントンは、作曲家、ピアニスト、バンド・リーダーとして、ジャズを芸術の領域へと押し上げた人物。数千曲とも言われる作品を残し、ビッグ・バンドの可能性を極限まで広げました。
若い頃から身なりや立ち居振る舞いが洗練されていたことから、自然と「デューク」と呼ばれるようになったと言われています。
演奏も振る舞いも常に品格があり、「公爵」という称号がそのまま音楽性を表している好例です。
Prez(プレズ)
レスター・ヤングのあだ名が、Prez。
レスター・ヤングは、テナー・サックス奏者として、軽やかで歌うようなフレーズを確立し、それまでの力強さ重視だったサックスの価値観を大きく変えた存在です。
Prezは「President(大統領)」の略で、そのスタイルやセンスが周囲に与えた影響力の大きさから、仲間たちによってこう呼ばれるようになりました。
後輩ミュージシャンへの影響も絶大で、ジャズ界の文化的リーダーだったことが、このあだ名からも伝わってきます。
Lady Day(レディ・デイ)
ビリー・ホリデイのあだ名が、Lady Day。
ビリー・ホリデイは、独特のタイム感と、人生の影をそのまま映したような歌声で、ジャズ・ヴォーカルの表現を根本から変えたシンガーです。
このあだ名は、レスター・ヤングが彼女に付けたものです。気品と親しみを同時に感じさせる呼び名で、二人の深い音楽的つながりも感じさせます。
華やかさと脆さを併せ持つその歌声は、Lady Dayという名前と切り離して語ることができません。
Bird(バード)
最後はシンプルだけど超有名なこちら。
チャーリー・パーカーのあだ名はBird、またはBirdman。
チャーリー・パーカーは、アルト・サックス奏者として、ビバップという革新的なスタイルを生み出した中心人物。そのスピード感と自由度は、当時のジャズの常識を完全に塗り替えました。
由来にはいくつか説がありますが、「Yardbird(若鶏)」から短縮されたという説がよく知られています。
若い頃、移動中に車で轢いてしまった鶏を持ち帰って食べたというエピソードがあり、そこから Yardbirdと呼ばれるようになった、という話が有名です。
結果的に、空を飛び回るような彼の演奏スタイルと完璧に重なる愛称となりました。
おわりに
ジャズの世界では、強い存在感を持つあだ名がいくつも生まれてきました。
それは単なる呼び名ではなく、その人がどんな音を出し、どんな立ち位置で見られていたのかを示す、いわば短い評価のようなものだったのかもしれません。
今回紹介したあだ名を振り返ってみると、詩的なもの、ユーモアのあるもの、称号のようなものまで、その種類はさまざまですが、どれも、音楽性やキャラクターと不思議なほど強く結びついています。
由来を知ってから聴き直すと、いつもの演奏が少し違って聴こえたり、ミュージシャンの輪郭が前よりくっきり見えてきたりしませんか?
この情報がスパイスになって、次に聴くときに、より楽しんでいただけたら嬉しいです!

