どうも、ズワイガニです。
突然ですが、キャノンボール・アダレイって名前、めちゃくちゃカッコよくないですか!?(笑)
本名はジュリアン・エドウィン・アダレイなのですが、愛称“キャノンボール”のインパクトが強烈すぎて、世界中のジャズ・ファンに記憶されています。
今回は、数あるジャズの名演の中でも「枯れ葉の決定版」と称されるアルバム、キャノンボール・アダレイの『サムシン・エルス』をご紹介します。
キャノンボール・アダレイとは
1928年9月、フロリダ州タンパに生まれたアルト・サックス奏者。
“キャノンボール”という愛称はもちろん芸名で、食いしん坊だった学生時代のあだ名「カニボール(大食い)」が訛ってついたと言われています。名前の由来からしてすでにユーモアがありますね。
1955年にニューヨークに進出すると、一気に注目を浴びます。57年〜59年にはマイルス・デイヴィス・セクステットに加入し、あの『マイルストーンズ』『カインド・オブ・ブルー』にも参加。この時期に『サムシン・エルス』もレコーディングしています。
この頃のキャノンボールは、モダン・ジャズ黄金期のど真ん中で最前線を走っていた存在でした。
その後、弟ナット・アダレイ(コルネット奏者)と組んだバンドでは『ワーク・ソング』などのヒットを連発し、ファンキー・ジャズといえばキャノンボールというイメージを確立していきます。
SOMETHIN’ ELSE(サムシン・エルス) / キャノンボール・アダレイ
1958年、ブルーノート・レーベルから発売されたアルバム。メンバーを見れば、これはもう夢のような布陣です。
- キャノンボール・アダレイ(as)
- マイルス・デイヴィス(tp)
- ハンク・ジョーンズ(p)
- サム・ジョーンズ(b)
- アート・ブレイキー(ds)
そうそうたるメンツですが、聴けば聴くほど実質的にはマイルスとキャノンボールの共演盤に聞こえてきます。
枯れ葉(Autumn Leaves)の決定的名演
アルバム1曲目を飾るのが、あの有名な『Autumn Leaves(枯れ葉)』。もともとはシャンソンの曲ですが、このアルバムでマイルスが取り上げたことで一気にジャズ・スタンダードの王道になりました。
- マイルスのミュート・トランペットによる切なくもクールなテーマ
- それを受けて羽ばたくように吹き上がるキャノンボールのアルト・サックス
- 控えめながらも絶妙な間を演出するブレイキーのドラム
この三位一体感が「これぞ枯れ葉!」と呼ばれる理由です。
ちなみに、豪快なドラマーとして知られるアート・ブレイキーですが、マイルスから「このアルバムでは何もしないでくれ」と注文されたとか(笑)その結果、ブレイキー史上もっとも静かなプレイが聴ける作品になっています。
実質的にマイルス・デイヴィスのアルバムだった!?
ここで面白いのが、このアルバムの裏事情です。
マイルスは1950年代初頭、薬物問題でまともに活動できない時期がありました。そんな彼を支えたのがブルーノートの創設者アルフレッド・ライオン。彼はマイルスの復活を信じて録音の機会を与えていました。
しかし1955年、マイルスは大手コロムビア・レコードと契約してしまいます。ブルーノートはもはや「マイルス名義」でアルバムを出せなくなったわけです。
そこで登場したのがキャノンボール・アダレイ。当時マイルス・バンドの一員だった彼の名前を表に出し、裏ではマイルスがリーダーシップを取る。そうして誕生したのが『サムシン・エルス』だったのです。
だからこそ、このアルバムは「マイルス・デイヴィスの影のリーダー作」と呼ばれることもあるわけです。
おわりに
『サムシン・エルス』は、キャノンボールの人懐っこいアルト・サックスと、マイルスのクールなトランペットが絶妙に溶け合った、唯一無二の名盤です。ジャズを聴き始めた人が最初に出会う作品としても、自信を持っておすすめできます。
特に『枯れ葉』。この一曲を聴くだけで「ジャズってこういう音楽なのか!」と心に刻まれるはず。夜のリラックス・タイムにもぴったりですので、ぜひ一度聴いてくださいね!