ここはとある町の喫茶店。
レコードを聴きながら今日もマスターはつぶやく。
【4コマ漫画】喫茶店マスターのつぶやき14

『Bebop』の解説
『Bebop』は、ディジー・ガレスピーが1940年代に発表した代表曲で、モダン・ジャズの新時代を象徴する一曲です。
タイトルにもなっている「Bebop(ビバップ)」という言葉は、のちにジャズの新しいスタイルを指す名称として定着しました。もともとミュージシャンたちがスキャットで使っていた語感から生まれたと言われていますが、「この曲名からジャンル名が広まったのでは」という説が語られるほど、この曲の存在感は大きいものです。
ビバップは、それまでのスウィング・ジャズのダンス音楽的な雰囲気から離れ、より速く、複雑で、即興演奏を中心としたスタイルへと向かっていきました。『Bebop』のテーマは、その変化を象徴するかのようにスピーディで細かい音の動きが連続し、テーマだけでもアドリブのような密度を持っています。初めて聴くと驚くほど情報量が多いですが、まさにここにビバップの新しさが詰まっています。
演奏の軸となるのは、急速に変化するコード進行と、それに合わせて自在にラインを紡いでいくアドリブです。『Bebop』ではII-Vと呼ばれるコードの流れが次々と現れ、プレイヤーは次の和音を予測しながら音を選ぶ必要があります。このコードの流れに乗りながら自由に飛び回る感覚がビバップらしさであり、ジャズを学ぶ人にとってこの曲が基礎教本のような存在と扱われる理由でもあります。
もちろん、ディジー・ガレスピー自身の演奏も聴きどころの一つです。彼のトランペットは明るく伸びやかで、高音域のキレや軽快なユーモアに満ちています。『Bebop』の演奏では、その個性がより鮮やかに表れ、曲のエネルギーを一気に押し上げています。ガレスピーがパーカーらと共に作ったモダン・ジャズの革命が、音としてそのまま詰まっているような感覚です。
この曲が生まれた背景には、1940年代のニューヨークのジャズ・クラブ文化があります。ミントンズ・プレイハウスや52nd Streetのクラブには、新しいサウンドを求める若いミュージシャンが集まり、夜な夜な実験的な演奏が繰り返されていました。『Bebop』は、その熱気と革新のムードをそのまま閉じ込めた曲であり、ビバップという言葉そのものが象徴するジャズの転換点を体感させてくれる一曲です。
4コマ作者
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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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