どうも、ズワイガニです。
ジャズの演奏を支えるうえで欠かせない存在が、ドラム・セットです。
華やかなソロやスウィング感のあるリズムの裏で、バンド全体の呼吸をコントロールしているのがドラマーといえるでしょう。
本記事では、ジャズ・ドラムにおけるドラム・セットとはどのような構成で、どんな役割を担っているのかをわかりやすく解説します。
にわかジャズファン。この記事のライター、助手、蟹。
しったかJAZZ博士
しったかジャズファン。このブログの解説役である博士。
【4コマ漫画】ジャズ・ドラム!

ドラム・セットの基本構成
早速ですけど、ジャズにおけるドラム・セットの基本構成を教えてください!
基本はシンプルじゃ。バスドラム、スネアドラム、タム(ハイタム/ロータムとフロアタム)、ハイハットシンバル、ライドシンバル、クラッシュシンバル。ロックやポップスのドラムに比べると、ジャズでは比較的コンパクトなセットが好まれるぞ。ジャズでは必要最小限で表現する発想が強いから、ロックよりやや小ぶりで点数も少なめになりやすいのじゃ。

ロックよりやや小ぶりって、どのくらいなんですか?
バスドラムは18インチ前後が定番じゃ。音量よりまとまりとアタックの柔らかさを大事にしておる。主役はライドシンバルで、ここがスウィング感を作ると言われているぞ。ハイハットは2拍4拍で締めてテンポを引き締める役目じゃ。
スネアとバスは常に刻むんじゃなくて、合いの手みたいに入れるんですね。
そうじゃ。フレーズの隙間に合図や返事を入れるコンピングという考え方が中核にあって、ピアノやベースと会話しながら音楽を前に進めるのじゃ。
有名ジャズ・ドラマーのセット構成例
具体例があるとイメージしやすいです。歴史的なドラマーのセットはどうでしたか?
アート・ブレイキーの構成
ハード・バップを象徴する存在であり、ジャズ・メッセンジャーズを率いたブレイキーは、クラシックな4点セットを基本としたスタイルで知られておるぞ。
- バスドラム:20×14インチ
- スネア:14×5.5インチ
- ハイタム:12×8インチ
- フロアタム:14×14インチ(または16×16インチ)
- シンバル:ライド(20インチ前後)+クラッシュ+ハイハット
ブレイキーのサウンドは力強く、推進力にあふれているぞ。派手な装飾よりも、スウィングの芯を担うリズム・アプローチが特徴で、小さめのセットでも、熱量と説得力でバンド全体を引っ張るスタイルだったんじゃ。
エルヴィン・ジョーンズの構成
ジョン・コルトレーン・カルテットで活躍したエルヴィン・ジョーンズは、ポリリズムの複雑な重なりと独特のうねりで、ジャズ・ドラムの表現を大きく拡張したのじゃ。
- バスドラム:18×14インチ(ヤマハ期)または20×14インチ(グレッチ期)
- ハイタム:12インチ
- ロータム:13インチ
- フロアタム:16インチ(+18インチを併用することも)
- シンバル:ライド2枚+クラッシュ+ハイハット
エルヴィンの特徴は、ライドシンバルを左右に配置し、両手でスウィングの流れを作る点。音の波が重なり合うようなサウンドの渦は、彼独自の美学だった。ステージでは常に深く沈み込むフォームで、身体全体でリズムを掘るように叩くぞ。
トニー・ウィリアムスの構成
10代でマイルス・デイヴィス・クインテットに参加した天才ドラマー。小口径セットでのアタックの強さと、圧倒的なスピード感でジャズの次世代を切り開いたのじゃ。
マイルス期(1960年代前半)
- バスドラム:18×14インチ
- スネア:14インチ
- ハイタム:12インチ
- フロアタム:14インチ
- シンバル:薄めのライド+クラッシュ+ハイハット
小口径4点セットで、スピード感とアタックを両立。少ないパーツで圧倒的なエネルギーを放ち、モダン・ジャズの新しいドラム像を打ち立てたのじゃ。
Lifetime期(1969年以降)
- バスドラム:22〜24インチ
- スネア:14インチ
- ハイタム:12インチ
- ロータム:13インチ
- フロアタム:14〜16インチ
- シンバル:より厚めでパワフルなモデル
ロック・フュージョンへ移行し、3タム構成へ発展。ダイナミックでアグレッシブなドラミングにより、後の世代に強い影響を与えたのじゃ。
セット構成の自由度と個性
博士、こうして見ると、みんな似たようなセットでも、音や印象がまったく違いますね。
うむ。それこそがジャズの面白いところじゃ。ドラム・セットの構成は、演奏者の個性をそのまま映す鏡なのじゃ。ミニマルな4点で繊細に語る者もおれば、トニー・ウィリアムスのようにダイナミックな音でバンドを引っ張る者もおる。
なるほど。機材の数じゃなくてどう鳴らすかが大事なんですね。
その通りじゃ。しかも、同じライドシンバルでも選び方ひとつで音楽の性格が変わったりするぞ。薄くてダークな音を好む者もいれば、明るくてカッティングの効いたものを選ぶ者もおる。機材を通して自分の声を持つのがジャズ・ドラマーの醍醐味なのじゃ。
現代のジャズ・ドラム・セットの進化
最近のドラマーって、電子パッドとかも使ってますよね?
うむ、良いところに気づいたのう。今の時代は、トラディショナルなセットに加えて、電子パッドやサンプラーを組み合わせる奏者も増えておる。アコースティックの温かみを大切にしながら、現代的な音響と融合させるのが今のジャズの形の一つなのじゃ。
他にも小さい会場だと、カホンとかも使われますよね。
パーカッション的だが、「カホン+シンバル」のような簡易ドラム・セットで演奏することも多いの。限られた音の中でどれだけ表情をつけられるか、それが腕の見せどころじゃ。同じドラムでも、叩き方や組み合わせ次第でまるで違う顔を見せる。ほんとに、ドラムというのは奥深いのう。
おわりに
たしかに、こうして聞くと、ドラム・セットってすごく奥が深いですね。
うむ。ジャズ・ドラムにおけるセットとは、単なる打楽器の寄せ集めではなく、音楽の会話をリードし、バンド全体の呼吸を整えるための表現の道具なのじゃ。
少ないパーツでも、叩き方や間の取り方でいく通りもの感情を表せるのがジャズ・ドラマーなんですね。
まさにその通りじゃ。ドラムを語れるようになったら、君も一端のジャズ通といえよう。知らんけど。
知らんけど!!!
4コマ作者
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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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