どうも、ズワイガニです。
ジャズの名門レーベルというと、まずブルーノートやプレスティッジを思い浮かべる人が多いかもしれませんね!


しかし、じっくり耳を澄ませるタイプの名盤を探していくと、必ずたどり着くレーベルがあるんです。
それがリヴァーサイド・レコードです!
ビル・エヴァンスをはじめ、ウェス・モンゴメリー、セロニアス・モンクといった個性派ミュージシャンたちが名作を残した場所であり、派手さよりも人間らしい温かさを大切にした録音を数多く生み出してきました。
初心者にとっては少し地味に見えるかもしれません。でも、一度ハマると長く付き合える玄人が大好きなレーベルでもあります。
この記事では、そんなリヴァーサイド・レコードの魅力を、ジャズ初心者向けに紹介していきます!
リヴァーサイド・レコードとはどんなレーベル?
リヴァーサイド・レコードは、1953年にニューヨークで誕生したジャズ・レーベルです。
設立したのは、ビル・グラウアーとオリン・キープニュースという、熱心なジャズ愛好家の2人。もともと、1920〜30年代のトラディショナル・ジャズやスウィング・ジャズの名演を再発売する小さなレーベルとしてスタートしましたが、1954年ごろから現役ミュージシャンの新しい演奏も録音するようになります。
彼らが目指したのは、派手なアレンジや商業的な方向に流されるよりも、目の前の演奏をできるだけ自然な形で残すことでした。そのため、ライヴ会場の空気感や、スタジオでの距離感がそのまま伝わってくる作品が多くあります。
ビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビイ』や『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』を聴くと、ベースやドラムの位置関係がはっきり分かり、まるでテーブルのすぐ隣で演奏しているような臨場感が味わえます。
また、リヴァーサイドの作品は全体的に音量やテンションの押し引きが丁寧で、ミュージシャンの素の個性がそのまま出るような録音が多いのも魅力です。
大きな広告やイメージ戦略で売っていくようなレーベルではありませんでしたが、誠実に、良い演奏を、そのまま記録する、そんな気風が根付いたレーベルだったのです。
創設者ビル・グラウアーとオリン・キープニュースについて
彼らはジャズの熱心なリスナーであり、研究家に近い立場でした。
特にグラウアーは1920〜30年代の古いジャズ音源の復刻に強い情熱を持ち、まだ世の中に広く知られていない歴史的録音を世に出そうと奮闘していました。
一方、キープニュースは雑誌編集や音楽ライティングを手がけ、文章を書くことでジャズに関わっていた人物でした。
のちに彼はリヴァーサイドの名プロデューサーとして知られますが、当初は熱心なジャズ・ファンからのスタートだったのです。
2人の共通点は、派手な商業主義よりも良い音楽をきちんと残すことを大事にしたところ。
レーベルとしては小さく、資金も潤沢ではありませんでしたが、ミュージシャンと直接向き合い、信頼関係を築きながら作品を作り上げる姿勢は、その後のリヴァーサイドの魅力を形づくる大きな要素になります。
ビル・エヴァンスやモンクがリヴァーサイド期に名作を残した背景には、この音楽オタク的な情熱を持った2人の存在があったのです。
活動期間
リヴァーサイド・レコードの実質的な活動期間は、1953年の創設から1964年頃までのおよそ10年間です。
当初は古いジャズ音源の再発売を中心に行っていましたが、1950年代半ばから現代のジャズ・ミュージシャンを積極的に録音し、数々の名盤を生み出していきました。
しかし1960年代初頭、共同創設者ビル・グラウアーの急逝が大きな転機となります。経営の中心人物を失ったレーベルは急速に財政難に陥り、負債も膨らんだことで活動の継続が難しくなりました。
その結果、リヴァーサイドは1964年頃に事実上の終焉を迎えます。わずか10年ほどの活動ながら、その間に残した作品群は非常に質が高く、短命だが名盤揃いのレーベルとなりました。
リヴァーサイドが与えた影響
リヴァーサイド・レコードは、巨大な資本を持つレーベルではありませんでした。
しかしその誠実な記録姿勢と、アーティストの個性を尊重するスタイルは、後のジャズ録音やプロデューサー像に大きな影響を残しました。
ビル・エヴァンスやウェス・モンゴメリーのような繊細で内省的な音楽性を、過度な加工をせずその場の空気ごと残す録音スタイルは、のちにECM(ヨーロッパの名門レーベル)などが打ち出す静かに音楽の本質を記録する方向性とも重ねて語られることがあります。
また、セロニアス・モンクがリヴァーサイド期に再評価されたことは、個性的なアーティストをどう育てるかというプロデューサーの役割にも、ひとつの指針を与えたと言われています。
リヴァーサイド・レコードを語る上で欠かせないミュージシャン
リヴァーサイドの歴史を語るとき、必ず名前が挙がるアーティストがいます。
それは単に名盤を残しただけではなく、彼らのキャリアの重要な瞬間がリヴァーサイドと深く結びついているからです。
ここでは特に重要な4人を紹介します。
ビル・エヴァンス
リヴァーサイド最大の功労者といえば、やはりビル・エヴァンスです。
彼の代表作である『ワルツ・フォー・デビイ』や『サンデイ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード』は、どちらもリヴァーサイドで録音されました。
繊細で内省的なピアノ・タッチ、呼吸のように動くトリオのアンサンブルは、リヴァーサイドの録音哲学(自然で生々しい音作り)と非常に相性がよく、エヴァンスの音楽性をもっとも純度高く記録した決定版を残しました。
セロニアス・モンク
セロニアス・モンクが世間から再評価されるきっかけとなったのが、リヴァーサイドへの移籍でした。
プレスティッジ時代には難解と言われることの多かった彼ですが、リヴァーサイドはスタンダード集を録音させたり、じっくり作品を作る機会を与えることで、彼の独創性をより多くのリスナーに届けることに成功します。
『ブリリアント・コーナーズ』『セロニアス・モンク・プレイズ・デューク・エリントン』など、名盤がまとまっているのもこの時期です。
ウェス・モンゴメリー
ウェス・モンゴメリーは、リヴァーサイドが発掘した最大の逸材です。
デビュー作『ウェス・モンゴメリー・トリオ』から、代表作『インクレディブル・ジャズ・ギター』まで、初期の傑作はほとんどリヴァーサイドから生まれました。
親指奏法による温かい音色や、歌うようなフレージングは、リヴァーサイドの自然な録音と相まって非常に魅力的に残されています。
キャノンボール・アダレイ
キャノンボール・アダレイがソウルフルなサウンドを持つスターとして確立されたのもリヴァーサイド期です。
ピアニストのビル・エヴァンスと共演した『Know What I Mean?』など、温かみのある音作りと彼の包容力のあるサックス・トーンの相性は抜群です。
初心者におすすめのリヴァーサイド・レコードの名盤5選
Waltz for Debby / ビル・エヴァンス・トリオ (1962)
リヴァーサイドといえば、まずはこの一枚と言われるほどの定番ライヴ盤です。
ニューヨークの名門ジャズクラブ、ヴィレッジ・ヴァンガードでの公演を収録しており、客席のざわめきやグラスの音まで入ったその場の空気が魅力。
タイトル曲の優しいリリシズムと、3人の絶妙な呼吸感は、ジャズ初心者でもすんなり楽しめます。夜に小さめの音で流すだけで気持ちよく過ごせる、安心の一枚です。
Sunday at the Village Vanguard /ビル・エヴァンス・トリオ (1961)
先ほどの『Waltz for Debby』と同日のライヴから作られた姉妹編。
こちらは即興性の強い演奏が多く、トリオとしての緊張感やドラマがはっきり味わえます。同じ会場、同じメンバーでありながら、選曲と編集で雰囲気が変わる点も面白いところ。
2枚セットで聴くと、リヴァーサイドの自然な録音の魅力がさらに伝わります。
The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery / ウェス・モンゴメリー (1960)
親指奏法の温かいトーンで知られるギターの巨匠、ウェス・モンゴメリーの代表作。
歌うようなソロ、リラックスしたグルーヴ、メロディの気持ちよさが揃ったギター名盤中の名盤です。
テクニックよりも音色の心地よさが前に出ているので、初心者にも聴きやすい一枚。リヴァーサイドが発掘したスターの決定的名作としておすすめです。
Brilliant Corners / セロニアス・モンク (1957)
やや踏み込んだ一枚ですが、リヴァーサイドを語るなら欠かせません。独特のリズム感と不意を突く和音で知られるモンクが、その個性を極限まで発揮した作品です。
タイトル曲は複雑で最初は難しく感じますが、繰り返し聴くほどクセになるタイプ。ジャズの自由さを体感できるアルバムで、少し冒険したい人にぴったりです。
Know What I Mean? / キャノンボール・アダレイ (1962)
ソウルフルなアルトサックス奏者、キャノンボール・アダレイと、ビル・エヴァンスが共演したリヴァーサイドの名作。
キャノンボールの明るく包容力のある音色と、エヴァンスの繊細な美しさが絶妙に混ざり合う、非常に聴きやすい一枚です。
軽すぎず、難しすぎず、ちょうどいいジャズの心地よさが味わえます。
おわりに
リヴァーサイド・レコードは、ブルーノートほど派手なブランド力があるわけではありません。
しかし、ビル・エヴァンスやウェス・モンゴメリー、セロニアス・モンクといった偉大なミュージシャンたちが、最も自然な姿で音楽を残せた場所として、多くのリスナーに愛され続けています。
録音の空気感や、ミュージシャン同士の距離の近さ、そして演奏者の個性がそのまま伝わってくる作品の数々は、ジャズの人間味や温度を感じるにはうってつけです。
今回紹介した5枚は、どれも初心者が入り口として聴きやすく、そこから気になったミュージシャンを掘っていくと、リヴァーサイドの魅力がさらに広がっていくと思います。
まだ聴いたことのない方は、ぜひ気になったアルバムから聴いてみてくださいね!


