帝王マイルス、戦慄のデビュー戦。バードとの初共演盤『The Charlie Parker Story』

JAZZあれこれ

どうも、ズワイガニです。

ジャズ界の帝王として君臨したマイルス・デイヴィス。そんな彼にも、憧れのスターを追いかけ、がむしゃらに食らいついていた新人時代がありました。

今回は、若きマイルスが「モダン・ジャズの父」チャーリー・パーカー(バード)の公式録音に参加した記念すべき一枚を紹介します。

天才の横で冷や汗をかきながら奮闘する、19歳のマイルスの姿が目に浮かぶような、スリリングなアルバムですよ!


マイルスとパーカーは、同じアパートで暮らして苦楽(とトラブル)を共にした腐れ縁のような関係だったんじゃ。マイルスとパーカーの関係を知りたい方はこちらの記事も読んでみてくれい!

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The Charlie Parker Story / チャーリー・パーカー (1956)

1945年11月、サヴォイ・レコードで行われたこのセッションは、モダン・ジャズ(ビバップ)の歴史を変えた伝説の録音として知られています。

リリース年について 本作の録音自体は1945年11月26日に行われましたが、後に12インチLPとしてまとめられ、現在のタイトルでリリースされたのが1956年であるため、この年を表記しています。

パーカーは、自身のレギュラー・バンドに当時19歳のマイルス・デイヴィスを抜擢しました。マイルスにとっては、これがプロとしての実質的なデビュー戦。周りはチャーリー・パーカーを筆頭に、マックス・ローチ(ドラムス)など、ビバップの猛者ばかりです。

マイルスがどれほど緊張していたかは、残された音源からも伝わってきます。

実はこの時、マイルスがあまりに難曲に苦戦したため、数曲ではディジー・ガレスピーがこっそりトランペットを代わりに吹いているという説もあるんじゃ。まさに新人マイルスにとっての「洗礼」のような現場だったんじゃな。

聴きどころ:初々しいマイルスと、神がかったバード

このアルバムの面白さは、完成された帝王マイルスではなく、「必死に食らいつく新人マイルス」が聴ける点にあります。

Billie’s Bounce

ジャズ・セッションの超定番曲ですが、ここでのマイルスはパーカーの猛烈なスピードに必死についていこうとしています。後のクールなスタイルとは違う、一生懸命で初々しいフレージングが新鮮です。

Now’s The Time

ブルース・フィーリング溢れる名曲。パーカーのアルト・サックスが縦横無尽に駆け巡る後ろで、マイルスが緊張感を持って丁寧に音を紡いでいます。

Ko-Ko

超高速テンポの難曲です。実はこの曲、マイルスはあまりの速さにイントロとエンディングが吹けず、そこだけディジー・ガレスピーが代わりにトランペットを吹いていると言われています。当時のビバップ界の混沌としたエネルギーが凝縮された一曲です。

失敗を糧にするマイルスの強さ

正直なところ、このアルバムでのマイルスの演奏は、パーカーの圧倒的な輝きに比べれば「まだまだこれから」という印象を受けるかもしれません。

しかし、マイルスはこの現場で自分のテクニックの限界を知り、だからこそ「自分にしか吹けない、スペース(間)を活かした音」を追求することを決意したと言われています。

天才の隣で恥をかき、打ちのめされながらも、それを自分のスタイルへと昇華させていく。そんなマイルスの原点がこの1945年の録音に刻まれていると思うと、一音一音がより深く聴こえてきませんか?

おわりに

『The Charlie Parker Story』は、単なる古いジャズの録音ではありません。一人の若者が、歴史に名を残す「帝王」へと脱皮し始める瞬間を捉えた、ドキュメンタリーのようなアルバムです。

実はこの時の未完成なマイルスを起用したパーカーの姿は、後のマイルスの行動とも重なります。マイルスもまた、まだ発展途上だった若きジョン・コルトレーンを周囲の反対を押し切って自分のバンドに大抜擢したからです。

自分がバードにチャンスをもらったように、マイルスもまた、可能性を秘めた新人を信じてジャズの未来を繋いでいったのかもしれませんね。

パーカーの神がかったプレイに圧倒されつつ、隣で奮闘する19歳のマイルスに「頑張れ・・・!」と心の中でエールを送りながら聴いてみるのも、また違った楽しみがあっていいものですね。

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