どうも、ズワイガニです。
ジャズの名曲『My Favorite Things(マイ・フェイヴァリット・シングス)』。現在ではスタンダードとして当たり前のように演奏されていますが、この曲をジャズとしての別次元の名曲に仕上げたのは、ほかでもないジョン・コルトレーンです。
今回は、コルトレーンのキャリアを大きく変えた歴史的名盤『My Favorite Things』を紹介します!
アルバム『My Favorite Things(マイ・フェイヴァリット・シングス)』
1960年、ジョン・コルトレーンはマイルス・デイヴィス・クインテットを二度目の脱退という大きな節目を迎えます。
その直後に録音されたのが、この『My Favorite Things』です。翌1961年にリリースされました。
このアルバムを支えたメンバーは次の4人。
- ジョン・コルトレーン(ss,ts)
- マッコイ・タイナー(p)
- スティーヴ・デイヴィス(b)
- エルヴィン・ジョーンズ(ds)
特に注目したいのは、コルトレーンが本格的にソプラノ・サックスを導入した最初期の作品であることです。この選択が、後にフュージョン系サックス奏者の間でソプラノ・サックスが一般化する大きなきっかけとなりました。
タイトル曲はワルツのリズムで進み、ソプラノ・サックスの澄んだ音色が曲そのものの透明感に驚くほどマッチしています。ただ綺麗なだけではなく、カルテットがぶつかり合うように火花を散らしながら進むスリリングさもこの録音の魅力です。
アルバムの3曲目と4曲目では、スタンダード・ナンバーをあえて原曲の枠から大きく外し、コルトレーン独自の解釈で再構築しています。知っている曲なのに、まったく別物に聴こえる驚きを味わうことができます。
タイトル曲『My Favorite Things』について
アルバム1曲目のタイトル曲『My Favorite Things』は、もともとブロードウェイ・ミュージカル
『The Sound of Music(サウンド・オブ・ミュージック)』の劇中歌として生まれました。
しかし、コルトレーンがこの曲を取り上げた当時、「これはミュージカルの曲だ」と認識しているジャズ・ファンは意外と多くありませんでした。マイナーな曲だったんですね。
むしろコルトレーンの演奏が強烈すぎて、原曲を知らないままこのジャズ版を初めて聴いた人も多かったそうです。
コルトレーン版の大ヒットによって、曲そのものが広く知られるようになり、さらに5年後の1965年、映画『サウンド・オブ・ミュージック』がアカデミー賞を受賞したことで、一気に世界的な名曲として定着していきました。
コルトレーン自身もこの曲を深く愛しており、晩年まで演奏し続けています。ライヴ録音では演奏時間が20〜30分に及ぶこともあり、その進化の過程を追うだけでもひとつの音楽のドラマを観ているようですね。
おわりに
『My Favorite Things』は、ジョン・コルトレーンがキャリアの転機に選んだ新たな挑戦であり、彼の音楽観が大きく変わり始めた瞬間をそのまま閉じ込めた作品です。
ソプラノ・サックスの導入、レギュラー・バンドの結成、原曲を大胆に解体するアプローチ、そのすべてが後のモード・ジャズ、さらにはスピリチュアル期へとつながっていきます。
そして、このアルバムをきっかけに『My Favorite Things』という曲は、ジャズ界だけでなく世界の音楽シーンに広く根付いていきました。
この作品に触れると、ジャズは自由に形を変えながら成長していく音楽なのだということをあらためて実感させられます。
ということで、ジョン・コルトレーンの『My Favorite Things』、まだ聴いたことがない方はぜひ聴いてみてくださいね!


