どうも、ズワイガニです。
今回は、チック・コリアが本格的にフュージョンへ舵を切った名盤『リターン・トゥ・フォーエヴァー』を紹介します。
チック・コリア本人の音楽人生にとっても、70年代ジャズ界にとっても「ここから何かが動き始めた」そんな印象の1枚です!
アルバム発表までの来歴
チック・コリアが大きく注目されるようになったのは、マイルス・デイヴィスのバンドに加入した1968年のこと。当時のマイルスはエレクトリック楽器を取り入れ、ジャズの世界を大胆にアップデートしていた真っ最中でした。
その頃の作品、1969年『イン・ア・サイレント・ウェイ』、1970年『ビッチェズ・ブリュー』のレコーディングにチック・コリアも深く関わっています。
そして、この電化マイルス時代の特徴が、鍵盤奏者を複数人同時起用する大胆な編成です。チックが一緒に演奏したメンバーはというと、ハービー・ハンコック、ジョー・ザヴィヌル、キース・ジャレットという超豪華ラインナップ。
後にフュージョン界を代表するスターばかりで、「歴史の節目ってこうやって作られたんだな」と思わず唸ってしまうほどですね。
その後、チック・コリアはフリー・インプロヴィゼーション寄りのバンド、サークルで活動しつつも、よりメロディックで温かみのある音楽を作りたいと考えるようになります。
その流れの中で1971年、自身の新しい音楽性を形にするため、リターン・トゥ・フォーエヴァーというバンドを結成します。
そして翌72年、バンド名と同じタイトルのアルバム『リターン・トゥ・フォーエヴァー』をリリースすることになりました。
Return To Forever / チック・コリア (1972)
このアルバムはクレジットこそチック・コリア名義ですが、実質的にはバンドとしてのデビュー作。ここから本格的にリターン・トゥ・フォーエヴァー(RTF)の物語が始まります。
レコーディング・メンバーはこちら。
- チック・コリア(key)
- ジョー・ファレル(fl,ss)
- スタンリー・クラーク(b)
- フローラ・プリム(vo,per)
- アイアート・モレイラ(ds)
このアルバムは、今まで聴いたことの無いような新しいサウンドを提示して、大ベストセラーになりました。
エレクトリック・ピアノの包み込むような響き、浮遊感のあるヴォーカル、そしてブラジル音楽からの影響を強く感じる明るさとリズムの軽やかさ。それらが一枚の音楽に溶け合って、当時では驚くほどフレッシュなサウンドに仕上がっています。
特に印象的なのが『クリスタル・サイレンス』と『ラ・フィエスタ』の2曲です。
『クリスタル・サイレンス』は静謐さと透明感が美しく広がる楽曲で、聴くたびに世界がスッと澄んでいくような感覚があります。
一方の『ラ・フィエスタ』は情熱的でサンバのリズムが軽やかに弾む、思わず身体が動くような明るい曲です。
この2曲はアルバムのハイライトであるだけでなく、チック・コリアというミュージシャンの魅力を象徴していると言ってもいいほどです。
ヴォーカルを楽器のひとつとして扱うフローラ・プリムのアプローチも画期的で、RTFの軽やかだけど深い世界観をつくる重要なピースになっています。
この作品が大ヒットしたことで、70年代ジャズは一気にフュージョンへと向かい、以降の音楽シーンにも大きな影響を与えていきました。
おわりに
私にとって『リターン・トゥ・フォーエヴァー』は、「フュージョンってこんなに自由で、美しくて、ワクワクする音楽なんだ!」と教えてくれた作品なんです。
難解なジャズというよりは、むしろ風が吹き抜けるように心地よく聴ける1枚なので、ジャズ初心者にもおすすめです。
これからフュージョンの世界に入ってみたい人は、まずはぜひこのアルバムから始めてみてください。
あなたの中のフュージョンの時代も、ここから始まるかもしれませんよ!


