広告:この記事はプロモーションを含みます

サックスの音を歪ませる「グロウ奏法」とは?やり方とコツを初心者向けに解説

座学

どうも、ズワイガニです。

皆さんは「サックスの音」と聞いて、どんな音色を思い浮かべますか?

きっと多くの方が、夜景の似合うジャズ・クラブで流れているような、滑らかで甘く、つるんとした美しい音色を想像するのではないでしょうか。

たしかに、アルト・サックスやテナー・サックスが奏でるメロウなバラードは、うっとりするほど魅力的ですよね。

でも、ライヴ映像やロック、ファンクなどの音源を聴いていると、時々「バリバリッ!」「ギャーッ!」といった、まるでエレキ・ギターが歪んだような、ものすごくワイルドで激しいサックスの音を耳にすることがあると思います。

人間の叫び声のような、聴く人のテンションを強制的に引き上げるあのド迫力なサウンド・・・「あれって、本当に同じ楽器から出ている音なの!?」と驚いた経験がある方も多いはずです。

実はあれ、サックスが壊れているわけでも、マイクの調子が悪いわけでもありません。奏者が意図的に音を歪ませて吹く特殊奏法のひとつなんです。

今回は、そんなサックスをかっこよく唸らせるテクニック、「グロウ(グロウル)奏法」について、初心者の方にも分かりやすく徹底解説していきます!

スポンサーリンク

グロウ(グロウル)奏法って何?

まずは言葉の意味から紐解いていきましょう。

「グロウ」あるいは「グロウル」は、英語で「Growl」と書きます。辞書を引いてみると、「(犬などの動物が)唸る」「(人が)怒鳴る、ガミガミ言う」といった意味が出てきます。犬や狼が相手を威嚇する時に「グルルルル・・・」と喉の奥を鳴らす、あの唸り声のことですね。

音楽用語としての「グロウ奏法」は、まさにこの言葉の通り、楽器を「唸らせる」テクニックのことを指します。

通常、管楽器は息をスムーズに吹き込んで、リード(マウスピースについている薄い木の板)や唇を規則正しく振動させることで、澄んだ美しい音を出します。しかし、グロウ奏法ではあえてその規則正しい振動を乱し、音を濁らせたり、激しく歪ませたりするのです。

エレキ・ギターをやったことがある方なら、「ディストーション」や「オーバードライヴ」といったエフェクターを踏んで、音を「ギュイーン!」と歪ませる感覚に近いと言えば、イメージしやすいかもしれません。サックスの場合は、足元の機械を踏むのではなく、奏者自身の体を使って生のエフェクターをかけるわけです。

この奏法は、トランペットやトロンボーンなどの金管楽器でも使われますが、特にアルト・サックスやテナー・サックスなどの木管楽器(リード楽器)で非常に多用されます。滑らかで美しい音色から一転して、一瞬で荒々しい獣のような音色に変化させることができるため、演奏に劇的なコントラストを生み出すことができる大技中の大技なのです。

グロウ奏法の仕組みとやり方

「じゃあ、どうやって音を歪ませているの?思いっきり強く息を吹き込んでいるだけ?」と思うかもしれませんが、実はただ強く吹くだけでは、音が大きくなるだけでグロウの音にはなりません。

グロウ奏法の最大のタネ明かしをしてしまうと、その仕組みは「声を出しながら吹く」ことなんです。

「えっ、吹きながら声を出すの!?」と驚かれるかもしれませんが、まさにその通り。サックスを口に咥えて息を吹き込むと同時に、喉の奥で「ウー」とか「ヴー」といった唸り声をあげるのです。

これがどうして音を歪ませることに繋がるのか、少しだけ物理的なお話をしましょう。

普通にサックスを吹く時は、息の流れによってマウスピースのリードだけが振動して音が出ます。しかし、声を出しながら息を吹き込むと、喉にある「声帯」が振動して音(声)を作ります。その声帯の振動を含んだ息が楽器に吹き込まれると、声帯の振動の波と、リードの振動の波が楽器の中でぶつかり合います。この2つの異なる波が干渉し合うことで、音が複雑に乱れ、あの「バリバリッ!」という歪んだグロウ・トーンが生まれるという仕組みです。

では、実際にサックス初心者がグロウ奏法を習得するための、簡単なステップをご紹介しましょう。

1

楽器を持たずに声を出す

まずは手のひらを口の前にかざし、「フーッ」と息を吐きながら「ウー」「アー」と声を出してみましょう。

POINT
息を止めずに、声を同時に乗せる感覚をつかむ。
2

マウスピースだけで試す

次はマウスピース(またはネックまで)を使って、息を入れながら同時に「ウー」と声を出します。

POINT
「息だけ」「声だけ」にならないよう、両方が同時に出る状態を探す。
3

サックスをつけて中音域で試す

楽器をセットし、まずは出しやすい中音域でロングトーン。その途中から「ウー」と声を混ぜてみましょう。

POINT
音が「ビリビリッ」と歪み始めたら、グロウの感覚がつかめています。

うまくグロウがかかると、普段のサックスからは想像できないような、ワイルドで迫力のある音色に変化します。

どんなジャンル・シーンで使われるの?

グロウ奏法は、ジャズの枠にとどまらず、本当に幅広いジャンルで活躍するテクニックです。

ロックンロール / ファンク / R&B

グロウ奏法が最も輝く場所と言っても過言ではないのが、ロックやファンク、R&Bといったノリの良いジャンルです。

エレキ・ギターやベース、ドラムがガンガン鳴っている爆音のバンド・サウンドの中で、普通の綺麗なサックスの音だと埋もれてしまうことがあります。

そこでグロウ奏法を使って音を歪ませることで、音抜けが良くなり、バンドの熱量に負けないド迫力のソロを吹くことができます。

ジャズ

ジャズにおいても、曲のクライマックスでテンションを上げたい時によく使われます。

特にブルース進行の泥臭い曲や、ビッグバンドの派手なアレンジの中で、ソリストが観客を煽るようにグロウを効かせると、会場は一気に熱狂に包まれます。

ポップスや歌謡曲、演歌まで!

実は日本の音楽シーンでもグロウ奏法は頻繁に使われています。

昭和の歌謡曲や演歌のイントロや間奏で、「むせび泣くようなサックス」を聴いたことがありませんか?あれもグロウ奏法(あるいはそれに近いサブトーンやベンドなどの複合技)です。

ヴォーカルの感情の昂ぶりを、サックスが代弁して叫んだり泣いたりしているわけですね。

人間の声に近い管楽器だからこそ、ロック・ヴォーカリストの「シャウト」や「スクリーム」と同じような感情表現として、グロウ奏法が使われるのです。

言葉にならない感情を、音の歪みに乗せてぶつける・・・そう考えると、すごくロックでエモーショナルなテクニックですよね。

グロウ奏法を語るなら外せない名サックス奏者たち

ここで、グロウ奏法を音楽の歴史に深く刻み込んだ偉大なサックス奏者たちと、その名盤をご紹介しましょう。

グロウ奏法を語る上で絶対に外せないのが、「ホンカー(Honker)」と呼ばれるサックス奏者たちの存在です。

「Honk」とは、アヒルがガーガー鳴く声や、車のクラクションを鳴らすという意味。1940年代後半から50年代にかけて、R&Bや初期のロックンロールのステージで、低音を荒々しく鳴らすホンキングやグロウなどを交えながら、野太く激しい音を吹き鳴らすテナー・サックス奏者たちが人気を集めました。

その「ホンカー」を代表する先駆的なプレイヤーの一人が、テキサス出身のイリノイ・ジャケーです。

Flying Home: The Best Of The Verve Years / イリノイ・ジャケー (1994)

※録音は1940〜50年代を中心としたコンピレーション・アルバムです。

イリノイ・ジャケーが弱冠19歳だった1942年、ライオネル・ハンプトン楽団のレコーディングで『Flying Home』という曲のソロを吹きました。

この時の彼のソロは、ジャズの枠を飛び越えるほどのすさまじい熱量と、グロウ奏法を交えた野性味あふれるブロウで構成されており、レコードは大ヒットを記録します。

この『Flying Home』での熱狂的なソロは、「ロックンロールにおける最初のサックス・ソロ」とも呼ばれ、その後のR&Bやロックンロールのサックス・スタイルにも大きな影響を与えました。

ホンカーたちはステージの上を歩き回り、時には仰向けに寝転がってサックスを天に突き上げながら、グロウ奏法でブイブイと吹き鳴らし、観客を熱狂の渦に巻き込んだのです。

このアルバムには、そんな彼の豪快でソウルフルなプレイがたっぷりと収録されています。

Live at Fillmore West / キング・カーティス (1971)

そしてもう一人、R&Bやソウルの世界で唸るようなワイルドなサックス・プレイを極め、数々の名演を残したのがキング・カーティスです。

キング・カーティスは、アレサ・フランクリンやジョン・レノンなど、数多くの大物アーティストから愛された名サックス奏者です。

このアルバムは、1971年にロックの聖地「フィルモア・ウェスト」で行われたライヴの模様を収録した、ソウル / R&B史に残る大名盤です。

アレサ・フランクリンのバックバンドを務めつつ、自身もメインアクトとしてステージに立った彼のプレイは、まさに圧巻の一言。1曲目の『Memphis Soul Stew』から、彼のテナー・サックスがブルージーに、そしてファンキーに唸りまくります。

彼のグロウ奏法は、ただ荒々しいだけでなく、どこか温かみがあり、歌心に溢れているのが特徴です。

残念ながら彼はこのアルバムがリリースされた直後に不慮の死を遂げてしまうのですが、彼の遺したこの熱いライヴ・ヴァージョンは、今でも多くの音楽ファンを虜にしています。

練習のコツと注意点

歴史的な名演を知って、「自分もグロウ奏法をやってみたい!」とモチベーションが上がったところで、最後に初心者が練習する際のコツと注意点をいくつかお伝えします。

アンブシュア(口の形)を崩さないこと

声を出しながら吹くという特殊な動作をするため、初心者はどうしても口元(アンブシュア)が緩んでしまいがちです。

アンブシュアが緩むと、音程(ピッチ)が極端に下がってしまったり、最悪の場合は息が漏れて音が出なくなってしまいます。

声を出しつつも、口元はいつも通りしっかりとマウスピースをホールドすることを意識しましょう。

声と息のバランスを研究する

大声を出せば激しく歪むというわけではありません。声の高さ(ピッチ)や、息のスピードの組み合わせによって、歪み方は細かく変化します。

自分の出したい音域に対して、どのくらいの声の高さで「ウー」と唸れば一番かっこよく歪むのか、自分なりの「スイートスポット」を探すのが上達の近道です。

喉を痛めないように適度に休む

慣れないうちは、喉に無理な力が入ってしまい、長時間練習すると喉がイガイガしたり、枯れたりすることがあります。

カラオケでシャウトしすぎた時のように喉を痛めてしまっては元も子もないので、最初は1日数分程度の練習にとどめ、こまめに水分補給をしながら適度に休んでくださいね。

おわりに

いかがだったでしょうか?今回はサックスのド迫力な特殊奏法、「グロウ(グロウル)」について解説しました。

つるんとした綺麗な音色をマスターするだけでも大変なサックスですが、こういった「音を汚す・歪ませる」テクニックを知ることで、音楽の表現力は無限大に広がります。

ジャズのライヴやロックの音源を聴く時、「あ、今グロウ奏法を使ったな!」と気づけるようになると、音楽を聴くのがさらに楽しくなるはずです。

サックスを練習中の方は、ぜひ周りに迷惑のかからない環境で(声を出しながら吹くので結構な音量になります!)、思いっきり「ウーッ!」と唸りながら、自分の中の野生を解放してみてください。綺麗に吹くだけでは味わえない、最高にロックでファンキーな快感が待っていますよ!

タイトルとURLをコピーしました