どうも、ズワイガニです。
早速ですが、「ヴァーヴ・レコード(Verve Records)」というレーベルをご存知でしょうか?
ジャズを聴き始めた人の中には「ブルーノートは知ってるけど、ヴァーヴはまだ・・・」という方も多いはず。ヴァーヴ・レコードは、数々の大物スターを世に送り出してきた、ジャズ界屈指の超エリート・レーベルなんです。
今回はそんなヴァーヴの歴史や魅力、そして「これだけは外せない!」というおすすめの名盤を解説したいと思います!
ヴァーヴの誕生は「ひとりの歌姫」のためだった!?
「ヴァーヴ」の歴史を語る上で絶対に欠かせない人物、それが創設者のノーマン・グランツです。
彼はもともと、1940年代から「JATP(Jazz at the Philharmonic)」というジャズのライヴ・コンサート・シリーズを主催し、大成功を収めていた敏腕プロデューサーでした。
当時のジャズは、小さなクラブで演奏されるのが一般的でしたが、グランツは「ジャズはもっと大きなコンサート・ホールで、たくさんの人に聴いてもらうべき芸術だ!」と考えました。そして、チャーリー・パーカー(アルト・サックス)やレスター・ヤング(テナー・サックス)といった超一流のミュージシャンを集めて、熱狂的なジャム・セッションを繰り広げるライヴを企画したのです。
さらに、グランツは人種差別と徹底的に闘った熱い男でもありました。当時のアメリカはまだ人種隔離政策が色濃く残っていましたが、彼は「白人も黒人も同じステージに立ち、観客席も人種を問わず一緒に座って楽しむこと」をコンサート開催の絶対条件にしたのです。これを拒否する会場での公演は、たとえ儲かるとしてもキャンセルしてしまうほどの徹底ぶりでした。
そんな彼が1956年に設立したのが「ヴァーヴ」です。実はこのレーベル、グランツがマネジメントを担当していた天才シンガー、エラ・フィッツジェラルドの魅力を世界中に届けるために立ち上げられたと言っても過言ではありません。
グランツは、ヴァーヴを設立する以前からエラ・フィッツジェラルドのマネージャーを務めていました。当時のエラは別のレーベル(デッカ・レコード)に所属していましたが、グランツは「彼女の真の魅力や実力(特にジャズ・シンガーとしての才能)が、今のレーベルでは十分に引き出されていない」と強い不満を抱えていました。当時は大衆向けのコミカルな曲やポップスなどを歌わされることも多かったためです。
そこでグランツは、「エラの素晴らしい歌声を、最高の形で世界に届けるための器」を自ら作ることを決意し、「ヴァーヴ・レコード(Verve Records)」を設立したのです。
ボサノヴァ・ブームとクリード・テイラー
エラ・フィッツジェラルドの大成功をはじめ、オスカー・ピーターソンやビリー・ホリデイなど、数々のスターを抱えて急成長した「ヴァーヴ」ですが、1960年代に入ると大きな転換期を迎えます。 1960年の終わりに、ノーマン・グランツはレーベルを大手映画会社の「MGM」に売却したのです。
そこで新しくプロデューサーとして「ヴァーヴ」にやってきたのが、クリード・テイラーという人物でした。彼は、それまでのゴリゴリのジャズだけでなく、「もっと大衆に受け入れられる新しいサウンドはないか・・・?」と常にアンテナを張っていました。
そんな彼が目をつけたのが、ブラジル発祥の新しい音楽「ボサノヴァ」です。テイラーは、テナー・サックス奏者のスタン・ゲッツを起用し、ブラジルのミュージシャンたちと共演させるという画期的なアイデアを思いつきます。これが大ヒットを記録し、アメリカ中、いや世界中に空前のボサノヴァ・ブームを巻き起こすことになりました。
特に、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトが共演したアルバムから生まれた名曲『イパネマの娘』は、ジャズの枠を飛び越えてポップスとしても大ヒット!グラミー賞まで獲得してしまいます。
クリード・テイラーの洗練されたプロデュース術によって、「ヴァーヴ」はジャズ・ファンだけでなく、一般の音楽ファンにも愛されるレーベルとしての地位を確立したのです。
これだけは聴いておきたい!ヴァーヴの超名盤アルバム
さて、ここからは「ヴァーヴ」が残した数々の名盤の中から、ジャズ初心者さんに全力でおすすめしたい4枚のアルバムをご紹介します!
Ella Fitzgerald Sings the Cole Porter Song Book / エラ・フィッツジェラルド (1956)
「ヴァーヴ」の記念すべき第一弾アルバムにして、ジャズ・ヴォーカルの金字塔です!
アメリカの偉大な作曲家、コール・ポーターの名曲の数々を、エラ・フィッツジェラルドが圧倒的な歌唱力で歌い上げています。
ジャズというと「アドリブが難しくてよく分からない・・・」と感じる方もいるかもしれませんが、このアルバムはメロディが美しく、まるで上質なミュージカル映画を観ているかのような気分に浸れます。エラの温かくて伸びやかな声に、一瞬で心を奪われること間違いなしです!
Night Train / オスカー・ピーターソン (1963)
「鍵盤の皇帝」ことオスカー・ピーターソンが残した、ピアノ・トリオの超名盤です。
レイ・ブラウンの重厚なベースと、エド・シグペンの軽快なドラムに乗せて、ピーターソンのピアノがこれでもかとスウィングしまくります。
タイトル曲の『Night Train』をはじめ、ブルースやR&Bのフィーリングがたっぷりと詰まった選曲になっており、とにかくノリが最高!小難しい理屈は抜きにして、思わず体がリズムを刻んでしまうような、ジャズの楽しさが凝縮された一枚です。
Getz / Gilberto / スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト (1964)
先ほども少し触れましたが、ボサノヴァ・ブームの頂点に君臨する歴史的な大名盤です!
スタン・ゲッツの柔らかくロマンチックなテナー・サックスと、ジョアン・ジルベルトの囁くようなヴォーカル&ギターが絶妙に絡み合います。
そして何と言っても、急遽レコーディングに参加することになったジョアンの妻、アストラッド・ジルベルトが英語で歌う『イパネマの娘』の気怠い魅力がたまりません。休日の朝や、リラックスしたい夜のBGMとして、これ以上ないほどぴったりなアルバムです。
The Dynamic Duo / ジミー・スミス&ウェス・モンゴメリー (1966)
ハモンド・オルガンの巨匠ジミー・スミスと、ジャズ・ギターの革命児ウェス・モンゴメリーという、まさに「ダイナミック・デュオ」による熱すぎる共演盤です!
オリヴァー・ネルソンがアレンジを手がけた豪華なビッグバンドをバックに、二人の天才が火花を散らすようなソロの応酬を繰り広げます。
特にオルガンとギターの相性が抜群で、ブルージーでソウルフルなサウンドは、聴いているだけでテンションが爆上がりしますよ!ジャズのカッコよさを全身で浴びたい時におすすめです。
現代へと受け継がれるヴァーヴの魂
「ヴァーヴ」は、決して過去の遺物になったレーベルではありません。現在も「ユニバーサル・ミュージック・グループ(UMG)」の傘下として、バリバリの現役で素晴らしい音楽を世に送り出し続けています。
例えば、甘くハスキーな歌声と見事なピアノ・プレイで現代のジャズ・シーンを牽引するダイアナ・クラール。そして、グラミー賞で最優秀アルバム賞に輝き、ジャンルの壁を軽々と飛び越える天才音楽家、ジョン・バティステ。さらには、若き正統派ジャズ・ヴォーカリストとして世界中から熱い視線を浴びるサマラ・ジョイなど、今の音楽界を代表するスターたちが「ヴァーヴ」から作品をリリースしています。
ノーマン・グランツが「最高の音楽を最高の形で届ける」という情熱で立ち上げたレーベルの魂は、半世紀以上の時を超えて、今のアーティストたちにもしっかりと受け継がれているんですね。
おわりに
いかがでしたでしょうか? 今回は、ジャズ界を代表する名門レーベル「ヴァーヴ」についてご紹介しました。
ひとりの歌姫への愛から始まり、人種差別の壁を壊し、ボサノヴァという新しい風を世界に吹き込んだ「ヴァーヴ」。 その歴史を知ると、アルバムを聴く時のワクワク感がさらに増してきませんか?
「ヴァーヴ」の作品は、ヴォーカルものやボサノヴァなど、ジャズ初心者さんにとって、とっつきやすくて、心地よいアルバムが本当にたくさん揃っています。
ぜひ、今回ご紹介した名盤の中から、気になったものを一つピックアップして聴いてみてくださいね!

