ここはとある町の喫茶店。
レコードを聴きながら今日もマスターはつぶやく。
【4コマ漫画】喫茶店マスターのつぶやき20

エリック・ドルフィーの『Fire Waltz』の解説
ジャズの歴史には「もしあの夜、このメンバーが集まっていなかったら・・・」と思わずにはいられない、奇跡のようなライヴ録音が存在します。今回ご紹介する『Fire Waltz』は、まさにそんな伝説の一夜を切り取った名演です。
舞台は1961年7月16日、ニューヨークにあった伝説的なジャズ・クラブ「ファイヴ・スポット」。超満員の熱気とタバコの煙が立ち込める中、ステージに上がったのは、アルト・サックス奏者のエリック・ドルフィーと、トランペット奏者のブッカー・リトルが率いるクインテット(5人編成のバンド)でした。
この録音には、ジャズファンの胸を締め付ける悲しいエピソードがあります。というのも、天才トランペッターとして将来を嘱望されていたブッカー・リトルは、なんとこのライヴのわずか数ヶ月後、23歳というあまりにも若すぎる年齢で急逝してしまうんです。さらに、圧倒的な個性でジャズ界を牽引していたエリック・ドルフィー自身も、この3年後に36歳でこの世を去ってしまいます。
つまり、この『Fire Waltz』は、二人の天才が命を燃やしてぶつかり合った、二度と再現できない一期一会の記録なんですね。
曲のタイトル『Fire Waltz』は、直訳すると「炎のワルツ」。ピアノを担当しているマル・ウォルドロンが作曲したこの曲は、その名の通り3拍子のワルツ調で始まります。最初はどこか哀愁漂うミステリアスな雰囲気なんですが、そこから少しずつ熱を帯び、まさに炎が燃え広がるような展開を見せていきます。
ここで絶対に耳を傾けてほしいのが、エリック・ドルフィーのアルト・サックスです!普通の綺麗なメロディを吹くのとはちょっと違って、音が急に高く飛んだり、低く沈んだり、時には動物の鳴き声や、人が激しく言い争っている話し声のように聴こえたりします。
「えっ、これってジャズなの・・・?」と最初はびっくりするかもしれません。でも、この常識にとらわれない自由でエモーショナルな表現こそが、ドルフィーの最大の魅力なんです。彼の演奏は、後の「フリー・ジャズ」と呼ばれるスタイルへ繋がっていく凄まじいエネルギーに満ちています。
そして、ドルフィーの野性的でアクロバティックなアルト・サックスに対して、ブッカー・リトルのトランペットはどこまでも美しく端正。それでいて、心の奥底にある熱い感情を絞り出すようなソロを聴かせてくれます。この「静」と「動」、「美しさ」と「激しさ」のコントラストが本当にたまらないんです!
もちろん、二人を支えるリズム隊も超一流です。作曲者であるマル・ウォルドロンの重厚なピアノ、リチャード・デイヴィスのうねるようなベース、そしてエド・ブラックウェルの躍動感あふれるドラムスが、フロントの二人を強烈にプッシュしています。
ジャズ初心者の方にとって、最初は少し難しく感じる部分があるかもしれませんが、難しく考えずに、まずはクラブの最前列に座っているような気分で音の波に身を任せてみてください。二人の天才が命を削って残した「炎のワルツ」の熱量が、きっとあなたの心にも火をつけてくれるはずです。
4コマ作者
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商業誌での受賞経験あり。
約1年間Web連載の漫画原作(ネーム担当)経験あり。
2019年よりフリーで活動中。
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