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ジャズに登場する『アランフェス協奏曲』名演3選

JAZZあれこれ

どうも、ズワイガニです。

ジャズを聴き始めていると、「あれ・・・?このメロディ、どこかで聴いたことがあるぞ?」と思う瞬間ってありませんか?

ジャズのミュージシャンたちは、古今東西のあらゆる音楽を吸収して自分たちのスタイルにアレンジするのが本当に得意なんです。

ミュージカルの挿入歌や映画音楽はもちろん、時にはクラシックの有名な楽曲がジャズに生まれ変わることも珍しくありません。

その中でも、ジャズ界の巨匠たちにこぞって愛され、数々の歴史的な名盤を生み出してきたクラシック曲があるのをご存知でしょうか・・・?

それが、今回ご紹介するテーマ『アランフェス協奏曲』です!

「クラシックの曲なんて難しそう・・・」と身構える必要はまったくありません!ジャズの魔法にかかった『アランフェス協奏曲』は、哀愁たっぷりで、情熱的で、とてつもなくクールなんです。

今回は、ジャズに登場する『アランフェス協奏曲』の魅力を、絶対に聴いておきたい3つの名盤とともにたっぷりとご紹介していきます!

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そもそも『アランフェス協奏曲』ってどんな曲・・・?

ジャズ・カヴァーの世界に飛び込む前に、まずは原曲である『アランフェス協奏曲』について少しだけお話ししておきましょう。

『アランフェス協奏曲』は、スペインの作曲家であるホアキン・ロドリーゴが1939年に作曲した、クラシック・ギターとオーケストラのための協奏曲です。

ロドリーゴは3歳のときにジフテリアという病気にかかり、その影響で視力を失ってしまった盲目の作曲家でした。しかし、彼はそのハンデを乗り越え、心の中に広がる美しい風景を音楽として描き出したのです。

タイトルの「アランフェス」というのは、スペインの首都マドリードの南にある美しい町の名前です。そこにはかつてのスペイン王室の夏の離宮があり、緑豊かな庭園が広がっています。ロドリーゴは妻との新婚旅行でこの地を訪れ、その美しい情景や歴史のロマンに深い感銘を受けてこの曲を書いたと言われています。

全3楽章からなるこの曲ですが、圧倒的に有名なのが「第2楽章(アダージョ)」です。イングリッシュ・ホルン(オーボエの仲間)が奏でる、どこかもの悲しくも美しいメロディに、クラシック・ギターが優しく寄り添うように絡み合う・・・。一度聴いたら忘れられない、胸を締め付けられるような哀愁に満ちた旋律です。

この「哀愁」と「スペインの情熱」が同居するドラマチックなメロディこそが、後に海を越えてアメリカのジャズ・ミュージシャンたちの心を激しく揺さぶることになるのです。

Sketches of Spain / マイルス・デイヴィス (1960)

ジャズ界で『アランフェス協奏曲』を取り上げた最も有名な例といえば、間違いなく「ジャズの帝王」こと、マイルス・デイヴィスのこのアルバムでしょう。

1960年にリリースされた『Sketches of Spain』は、マイルスがスペインの民族音楽やフラメンコにインスパイアされて制作したコンセプト・アルバムです。

事の発端は、マイルスが当時の妻と一緒にフラメンコ・ダンサーの公演を観に行き、その情熱的なリズムとメロディにすっかり魅了されてしまったことでした。

そこでマイルスは、長年の盟友であり天才アレンジャーのギル・エヴァンスに声をかけます。彼らはジャズのバンド編成ではなく、フレンチ・ホルンやオーボエ、ファゴット、ハープなどを含む大編成のオーケストラを用意し、ジャズとクラシック、そしてスペイン音楽を融合させるという壮大な実験に挑みました(こうした音楽の融合は「サード・ストリーム」と呼ばれます)。

アルバムの1曲目、A面の大部分を占める16分超えの大作が『Concierto de Aranjuez (Adagio)』、つまり『アランフェス協奏曲』の第2楽章です。

原曲ではクラシック・ギターが主役ですが、ここではマイルスが吹くトランペットとフリューゲル・ホーンが主役を務めます。ギル・エヴァンスが描く、まるで広大なスペインの大地を思わせるような重厚で色彩豊かなオーケストラのサウンド。その上を、マイルスのミュート(弱音器)をつけたトランペットが、まるで孤独な旅人のように、絞り出すような切ない音色でメロディを歌い上げます。

マイルス自身、この曲のメロディについて「強烈なメロディだから、弱く吹けば吹くほど強く響くんだ」と語っていたそうです。その言葉通り、感情を極限までコントロールしたマイルスのプレイは鳥肌モノです。

ジャズの枠を完全に超えた、まるで一本の映画を観ているかのような圧倒的なスケール感を味わえる名演です。

Concierto / ジム・ホール (1975)

次にご紹介するのは、ジャズ・ギターの巨匠、ジム・ホールが1975年にリリースした『Concierto』というアルバムです。

このアルバムは、「CTIレコード」という、当時のフュージョンやクロスオーヴァー・ジャズを牽引していたレーベルからリリースされました。

プロデューサーのクリード・テイラーが手がけたこの作品は、とにかく参加しているレコーディング・メンバーが「アベンジャーズか!?」とツッコミたくなるほど超豪華なんです。

主役のジム・ホール(ジャズ・ギター)に加え、ポール・デズモンド(アルト・サックス)、チェット・ベイカー(トランペット)、ローランド・ハナ(ピアノ)、ロン・カーター(アコースティック・ベース)、そしてスティーヴ・ガッド(ドラムス)という、ジャズ史に名を刻むレジェンドたちが奇跡的に集結したセクステット(6人編成)で録音されました。

アルバムのタイトル曲である『Concierto de Aranjuez』は、なんと19分にも及ぶ長尺の演奏です。しかし、長さをまったく感じさせないほど、極上のアンサンブルが繰り広げられます。

曲の冒頭、ロン・カーターの重厚なベース・ラインと、スティーヴ・ガッドの繊細でタイトなリズムに乗せて、ジム・ホールの温かく丸みのあるギター・トーンが、あの有名なメロディを奏で始めます。原曲と同じギターという楽器でありながら、クラシック・ギターとは全く違う、ジャズ・ギターならではの甘くブルージーな響きがたまりません。

そして、この曲の最大の聴きどころは、中盤から繰り広げられる各メンバーのソロ・リレーです!

チェット・ベイカーのトランペットは、どこまでも儚く、哀愁に満ちたフレーズを紡ぎ出します。それに続くポール・デズモンドのアルト・サックスは、まるで極上のシルクのようになめらかで美しい音色。彼らのソロを聴いているだけで、胸の奥がキュッと締め付けられるような感動を覚えます。

秋の夜長に、部屋の明かりを少し落として、お酒でも飲みながらじっくりと浸りたい・・・そんな大人のための最高にロマンチックな『アランフェス協奏曲』です。

Light as a Feather / チック・コリア・アンド・リターン・トゥ・フォーエヴァー (1973)

最後にご紹介するのは、少し変化球でありながら、おそらく現代のジャズ・シーンで最も演奏されているであろう超有名なヴァージョンです。

天才ピアニスト、チック・コリアが結成した伝説のバンド「リターン・トゥ・フォーエヴァー」が1973年にリリースした歴史的名盤『Light as a Feather』。このアルバムのラストを飾るのが、ジャズ・スタンダードとして世界中で愛され続けている名曲『Spain』です。

「えっ、『アランフェス協奏曲』の話をしてたんじゃないの?」と思うかもしれません。実は、この『Spain』という曲、冒頭のイントロ部分に『アランフェス協奏曲』の第2楽章のメロディがそっくりそのまま引用されているんです!

曲が始まると、チック・コリアのエレクトリック・ピアノ(フェンダー・ローズ)と、スタンリー・クラークのアルコ(弓弾き)によるアコースティック・ベースが、ルバート(テンポを揺らして自由に演奏すること)でしっとりと『アランフェス協奏曲』の哀愁のメロディを奏でます。この部分だけを聴くと、「ああ、美しいクラシックのカヴァーだな・・・」とウットリしてしまいます。

しかし!イントロが終わった瞬間、アイアート・モレイラの刻む情熱的なラテン・ビートが炸裂し、曲調がガラッと変わります。フローラ・プリムの軽快なスキャット(歌詞のないヴォーカル)と、ジョー・ファレルのフルートがユニゾンで、あの超絶技巧の高速メロディ「タララララララ〜♪」を駆け抜けるのです。

この静かな哀愁から燃え上がるようなラテンの熱狂への急展開は、何度聴いても鳥肌が立ちます。チック・コリアは『アランフェス協奏曲』の持つスペインの情景を、自分なりの解釈で最高にダンサブルでエキサイティングなジャズ・フュージョンへと昇華させました。

『Spain』は現在でも世界中のジャズ・ミュージシャンがセッションで演奏する大定番曲です。ライヴのアンコールなどでこの曲が飛び出し、会場全体が一体となって手拍子で大盛り上がりする瞬間に遭遇できたら・・・それはもう最高に楽しいですよね!

おわりに

スペインの盲目の作曲家が描いた美しい風景が、時と海を越えてマイルス・デイヴィスのトランペットになり、ジム・ホールのギターになり、チック・コリアのラテン・ジャズへと姿を変えていく。同じ『アランフェス協奏曲』というルーツを持ちながら、ミュージシャンの個性によって全く違う音楽の魔法がかかるのが、ジャズの面白くて奥深いところですよね。

クラシックとジャズ、一見すると遠い世界にあるような音楽でも、根底にある「美しいメロディを届けたい」という情熱は同じです。

今回ご紹介した3枚のアルバムは、どれもジャズの歴史に燦然と輝く大名盤ばかりです。「クラシックはちょっと・・・」「ジャズは難しそう・・・」という方にこそ、この美しいメロディの架け橋を渡って、素晴らしい音楽の世界に飛び込んでみてほしいと思います。

ぜひ、原曲のオーケストラ・ヴァージョンと聴き比べながら、それぞれのミュージシャンが描いたスペインの情景を楽しんでみてくださいね!

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