どうも、ズワイガニです。
「デッカ・レコード(Decca Records)」って聞いたことありますか?
スウィング・ジャズの黄金時代を支えた名門レーベルなのですが、ただの古いジャズのレーベルではありません。潜水艦の探知技術から生まれた驚異の高音質録音技術を持っていたり、あの「ビートルズ」をオーディションで落としてしまったりと、めちゃくちゃ面白いエピソードがたくさんあるんです。
今回は、そんなデッカ・レコードの歴史や魅力、そしてジャズ初心者におすすめの名盤を、分かりやすくカジュアルに解説していきます!
デッカ・レコードってどんなレーベル?イギリスとアメリカの2つの顔
デッカ・レコードを語る上でまず知っておきたいのが、「イギリスのデッカ」と「アメリカのデッカ」という2つの顔があるということです。
1929年にイギリスのエドワード・ルイスという人物が設立したのが、元祖「デッカ・レコード」です。その後、1934年にジャック・カップという敏腕プロデューサーによって「アメリカ・デッカ」が設立されました。
最初は親会社と子会社のような関係でしたが、やがてアメリカ・デッカは独立した会社として独自の道を歩み始めます。
クラシック音楽や高音質録音でヨーロッパを席巻したイギリス・デッカ。そして、ジャズやポピュラー音楽で大成功を収めたアメリカ・デッカ。この2つの拠点が、それぞれの強みを活かして世界の音楽シーンを牽引していったんですね。
アメリカ・デッカがジャズ界に残した功績
ジャズファンにとって馴染み深いのは、なんといってもアメリカのデッカ・レコードです。
設立者のジャック・カップは、めちゃくちゃビジネスセンスのある人物でした。当時のレコードは高価なものが多かったんですが、彼は「35セント」という破格の安さでレコードを売り出しました。そして、これが大ヒット!ジュークボックスの普及も相まって、音楽がより大衆の身近なものになったんです。
さらに彼は、ルイ・アームストロング、カウント・ベイシー、デューク・エリントン、ビリー・ホリデイといった、当時のジャズ界の超ビッグスターたちを次々とスカウトしていきました。
ジャック・カップには、レコーディングにおいて一つの強いこだわりがありました。それは「メロディをしっかり聴かせること」です。
ジャズといえば、トランペットやテナー・サックスなどの楽器が自由にアドリブ(即興演奏)を繰り広げるのが醍醐味ですよね。でも彼は、「一般のリスナーが聴いて、何の曲か分からないような自己満足の演奏はダメだ!」と考えました。スタジオには「Where’s the melody?(メロディはどこだ?)」という看板が掲げられていたという逸話もあるくらいです。
この方針のおかげで、デッカからリリースされたジャズのレコードは、すごくポップで親しみやすく、ジャズ初心者にもとっつきやすい作品がたくさん生まれました。
イギリス・デッカの超高音質技術「ffrr」とは?
一方、イギリスのデッカも負けてはいません。彼らの最大の武器は「圧倒的な音質の良さ」でした。
その代名詞とも言えるのが「ffrr(Full Frequency Range Recording:全帯域周波数録音)」という技術です。なんだか難しそうな名前ですが、要するに「めちゃくちゃリアルでクリアな音で録音できる技術」のことです。
実はこの技術、もともとは音楽のために作られたものではないんです。第二次世界大戦中、イギリス軍がドイツ軍の潜水艦(Uボート)のソナー音を正確に聞き分けるために開発された軍事技術だったんです。
戦争が終わった後、イギリス・デッカのエンジニアたちは「この超高性能なマイクと録音技術を、音楽のレコーディングに使ったらすごいことになるんじゃないか・・・?」と考えました。
その結果、クラシック音楽を中心に、まるでコンサート・ホールで生のオーケストラやヴァイオリンを聴いているかのような、驚異的な高音質レコードが次々と生み出されました。もちろん、一部のジャズ作品にもこの技術が使われ、当時のオーディオ・マニアたちを熱狂させました。まさに「ハイファイ(Hi-Fi)」の先駆けとも言える偉業ですね。
あの「ビートルズ」を落とした!?伝説のエピソード
デッカ・レコードの歴史を語る上で、絶対に外せない(ちょっと恥ずかしい)伝説のエピソードがあります。
それは、1962年の元日に起こりました。当時、まだデビュー前だった「ザ・ビートルズ」が、ロンドンにあるデッカのスタジオにオーディションを受けにやって来ました。彼らは猛吹雪の中、なんと10時間もかけて車でロンドンに到着し、緊張しながら15曲を演奏しました。
しかし、デッカのA&R(アーティスト発掘担当)だったディック・ロウは、彼らを不合格にしてしまいます。その時の断り文句がこれです。
「ギター・グループはもう時代遅れだ。(Guitar groups are on the way out.)」
歴史上、これほど大ハズレな予言があったでしょうか!?ビートルズはその直後にライバル会社のEMI(パーロフォン)と契約し、世界中の音楽の歴史を変える大スターになりました。
デッカ・レコードは「ビートルズを逃したレーベル」として、音楽業界の語り草になってしまったんです。
でも安心してください。ディック・ロウはその後、ジョージ・ハリスンからの「あいつら、けっこうイケてるよ」というアドバイスを素直に聞き入れ、「ザ・ローリング・ストーンズ」と契約を結ぶことに成功しました。これで少しは名誉挽回できた・・・のかもしれませんね。
デッカ・レコードのおすすめジャズ名盤3選
さて、ここからはジャズ初心者の方にぜひ聴いてほしい、デッカ・レコードの素晴らしい名盤を3つご紹介します!
The Complete Decca Recordings / カウント・ベイシー (1992)
スウィング・ジャズの王様、カウント・ベイシー楽団が1937年から1939年にかけてデッカに残した録音をまとめたコンピレーション・アルバムです。
この時期のベイシー・バンドは「オールド・テスタメント(旧約聖書)」と呼ばれる最強の布陣で、レスター・ヤングのテナー・サックスや、ジョー・ジョーンズのドラムが最高にスウィングしています。
ジャック・カップの「メロディを大切に」という方針もあり、ビッグバンド・ジャズの楽しさがギュッと詰まった、入門編にぴったりの作品です。
The Complete Decca Recordings / ビリー・ホリデイ (1991)
ジャズ・ヴォーカルの伝説、ビリー・ホリデイが1944年から1950年にかけてデッカで録音した名唱を集めたコンピレーション・アルバムです。
彼女の最大のヒット曲となった『Lover Man』をはじめ、ストリングス(ヴァイオリンなどの弦楽器)をバックに歌うゴージャスなアレンジの曲が多く収録されています。
彼女のキャリアの中でも、声のコンディションが非常に良く、表現力がピークに達していた時期の録音なので、夜にゆったりとお酒を飲みながら聴くのに最高ですよ。
Satchmo At Symphony Hall / ルイ・アームストロング (1947)
「サッチモ」の愛称で親しまれたジャズの巨匠、ルイ・アームストロングが1947年にボストンのシンフォニー・ホールで行ったライヴを収録した名盤です。
長年率いていたビッグバンドを解散し、「オールスターズ」という少人数のコンボ編成で挑んだこのライヴ。ジャック・ティーガーデンのトロンボーンなど、名手たちとの息の合った掛け合いがたまりません。サッチモのトランペットもヴォーカルも絶好調で、ライヴ・アルバムならではの熱気と楽しさがビシビシ伝わってきます!
おわりに
いかがでしたか?レーベルってそれぞれ個性があって面白いですよね。
「メロディを大切に」というプロデューサーの熱い信念があったり背景を知ることで、いつもの音楽がさらに奥深く、魅力的に聴こえてくるのではないでしょうか。
今回ご紹介した名盤を手始めに、ぜひデッカ・レコードが残した極上のジャズ・サウンドを聴いてみてください!

