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『ジーン・ハリス・トリオ・プラス・ワン』の魅力と聴きどころ【名盤解説】

JAZZあれこれ

どうも、ズワイガニです。

「ジャズって、なんだかお洒落すぎて敷居が高いな・・・」「音楽理論とかわかってないと楽しめないんじゃないの・・・?」

ジャズ初心者の方から、そんな声をよく聞きます。確かに、静かなカフェで流れているような知的なジャズや、複雑なコード進行でアドリブを繰り広げる難解なジャズもありますよね。

でも、ジャズの魅力はそれだけではありません!思わず体が動き出してしまうような、コテコテでソウルフル、そして理屈抜きで「楽しい!」と思えるジャズもたくさんあるんです。

今回は、そんなとにかくハッピーで熱いジャズの代表格とも言える大名盤をご紹介します。

それが、ピアニストのジーン・ハリス率いるトリオに、テナー・サックスのスタンリー・タレンタインが加わったライヴ・アルバム『The Gene Harris Trio Plus One』です!

ジャズクラブの熱気や、観客の歓声、そしてミュージシャンたちが本気でぶつかり合うエネルギーが真空パックされたこの1枚。ジャズ初心者の方にこそ絶対に聴いてほしい、最高のエンターテインメント作品です。

それでは、さっそくその魅力にたっぷりと迫っていきましょう!

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ジーン・ハリスの魅力

まずは、このアルバムの主役であるピアニスト、ジーン・ハリスについてご紹介しましょう。

彼は1933年生まれのアメリカのジャズ・ピアニスト。1950年代後半から「ザ・スリー・サウンズ」というピアノ・トリオを結成し、名門ジャズ・レーベルである「ブルーノート」などに数多くの録音を残した人気プレイヤーです。

彼のプレイスタイルを一言で表すなら、ブルージー&ソウルフル!

クラシック音楽のように繊細でクラシカルなタッチというよりは、黒人音楽のルーツであるブルースやゴスペル、R&Bの要素をたっぷり含んだ、とにかくスウィングしまくる演奏が持ち味です。

鍵盤を力強く叩き、転がるようなフレーズを次々と繰り出す彼のピアノは、聴く者を自然と笑顔にしてしまうような圧倒的な陽気さを持っています。

しかし、そんな人気者の彼にも不遇の時代がありました。1970年代に入ると、ジャズ界は電気楽器を取り入れたフュージョン・ブームに突入し、アコースティック・ピアノでストレートなジャズを演奏するジーン・ハリスのスタイルは、時代遅れとみなされるようになってしまったのです。

彼は一時、ジャズ界の第一線から退き、アイダホ州のホテルでラウンジ・ピアニストとして静かに演奏する日々を送っていました。

そんな彼を再びジャズ界の表舞台に引き戻したのが、ベースの巨匠レイ・ブラウンでした。レイ・ブラウンは彼の才能を惜しみ、自身が関わっていた「コンコード・ジャズ」というレーベルに彼を誘ったのです。

レイ・ブラウンの強力なバックアップを得て、ジーン・ハリスは見事にカムバックを果たします。

今回紹介する『The Gene Harris Trio Plus One』は、そんな彼の完全復活を決定づけた、ジャズ史に残る記念碑的な作品でもあるんです。

The Gene Harris Trio Plus One / ジーン・ハリス (1986)

このアルバムは、1985年の11月から12月にかけて、ニューヨークにある世界最高峰のジャズクラブ「ブルーノート」で録音されたライヴ・アルバムです。リリースは翌年の1986年。

レコーディングメンバーは以下の4人です。

  • ジーン・ハリス (p)
  • レイ・ブラウン (b)
  • ミッキー・ローカー (ds)
  • スタンリー・タレンタイン (ts) ※プラス・ワン

ベースのレイ・ブラウンは、ジャズの歴史を語る上で絶対に外せない超ビッグネーム。極太の音色と、誰にも真似できない強烈なスウィング感でバンドの屋台骨を支えます。

ドラムスのミッキー・ローカーは、出しゃばりすぎず、それでいてバンドを確実にスウィングさせる職人肌の名ドラマーです。

そして、タイトルの「プラス・ワン」として参加しているのが、テナー・サックスのスタンリー・タレンタイン

この4人が揃ったライヴ・ステージが、どれほど熱狂的なものだったか・・・想像するだけでワクワクしてきませんか?

「コンコード・ジャズ」というレーベルは、アコースティックなメインストリーム・ジャズ(王道のジャズ)を大切にしていることで知られています。

このアルバムも、余計な装飾を一切削ぎ落とし、ミュージシャンたちの生身のぶつかり合いをそのままパッケージしたような、生々しいサウンドが魅力です。

最強のプラス・ワン、スタンリー・タレンタイン

このアルバムを語る上で絶対に外せないのが、ゲストとして迎えられた「プラス・ワン」こと、スタンリー・タレンタインの存在です。

彼もまた、ジーン・ハリスと同じく、ブルースやソウル・フィーリングに溢れたプレイが得意なテナー・サックス奏者で、1960年代のブルーノート・レーベルで「ソウル・ジャズ」というジャンルを牽引し、その後はフュージョン系のヒット作も飛ばした大スターです。

彼の吹くサックスの音は、とにかく太くて温かい!そして、どこか泥臭くて男らしい、色気のある音色が特徴なんです。

ジーン・ハリスのコテコテでハッピーなピアノと、スタンリー・タレンタインのソウルフルで歌心あふれるテナー・サックス。この二人が出会って、化学反応が起きないわけがありません。

ライヴならではのリラックスしつつも熱を帯びた雰囲気の中、二人がお互いのフレーズに反応し合い、どんどん演奏がヒートアップしていく様子は圧巻の一言です。時には優しく語りかけ、時には激しく咆哮するタレンタインのサックスは、このアルバムに極上のスパイスを加えています。

フュージョン路線で活躍していたタレンタインにとっても、このアルバムはストレート・アヘッドなジャズ(王道のアコースティック・ジャズ)の魅力を再確認させてくれる素晴らしいセッションだったに違いありません。

おすすめトラックを解説

全6曲収録のこのアルバムですが、どれもハズレなしの素晴らしい演奏ばかりです。その中でも、初心者の方にぜひ聴いていただきたいおすすめのトラックをいくつかピックアップして解説します。

Misty

ジャズ・スタンダードの中でも超有名な名曲。ピアニストのエロル・ガーナーが作曲したとろけるように美しいバラードです。

この曲では、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスが大々的にフィーチャーされています。哀愁漂うメロディを、タレンタインがたっぷりと感情を込めて歌い上げるプレイは必聴です。

そこにジーン・ハリスのキラキラとしたピアノのバッキング(伴奏)が絶妙なタイミングで絡み合い、極上のロマンチックな空間を作り上げています。

夜に部屋の明かりを少し落として、お酒を飲みながら聴きたくなるような、大人の魅力が詰まった1曲です。

Things Ain’t What They Used To Be

ジャズ界の巨匠デューク・エリントンの息子、マーサー・エリントンが作曲したブルースの名曲(邦題は「昔はよかったね」)。

レイ・ブラウンの重厚でゴリゴリとしたベースラインから始まり、ジーン・ハリスのブルージーなピアノが転がるようにスウィングし始めます。

これぞ「ザ・ジャズ・ブルース」といった感じで、聴いていると思わず指パッチンをしたくなること間違いなし!タレンタインのサックスが入ってくると、さらにコテコテ度が増して、ジャズクラブの熱気が最高潮に達するのを感じられます。

Battle Hymn Of The Republic

日本では「ごんべさんの赤ちゃんが風邪ひいた」や、家電量販店の「ヨドバシカメラの歌」のメロディとしておなじみのアメリカ民謡(邦題は「リパブリック讃歌」)。

なんと、これをジャズでやっちゃうんです!原曲のマーチ(行進曲)の雰囲気を残しつつも、ゴスペル風の力強いアレンジが施されており、後半に向かってどんどん盛り上がっていく展開はまさに圧巻。ライヴ会場のお客さんの手拍子や歓声もバッチリ録音されていて、最高にハッピーな気分になれます。

ジャズってこんなに自由で楽しい音楽なんだ!と実感できる、このアルバムのハイライトとも言える名演です。

レイ・ブラウンの存在感

このアルバムの熱狂を底辺で支えているのが、ベースのレイ・ブラウンとドラムスのミッキー・ローカーによる鉄壁のリズム隊です。

特に、プロデューサーも兼任しているレイ・ブラウンの存在感は絶大です。彼の弾くウォーキング・ベース(4分音符でドゥン・ドゥン・ドゥン・ドゥンと歩くようにリズムを刻む奏法)は、ただテンポをキープするだけでなく、音楽全体に命を吹き込み、前に向かって突き進むような強烈な推進力を持っています。

アルバムの1曲目『Gene’s Lament』や3曲目『Uptown Sop』は、レイ・ブラウン自身が作曲したオリジナルのブルース・ナンバーなんです。彼がいかにこのプロジェクトに力を入れ、ジーン・ハリスのカムバックを後押ししようとしていたかが伝わってきます。

ジーン・ハリスの復活を誰よりも喜び、全力でサポートしているレイ・ブラウンの愛情と熱意が、極太のベースの音の端々から溢れ出しているようです。

ジャズにおける「ベースの重要性」を実感したい方にも、これ以上ないほど最適な教材と言えるのではないでしょうか。

おわりに

いかがでしたか?今回は、ジーン・ハリスの熱気あふれるライヴ盤『The Gene Harris Trio Plus One』をご紹介しました。

ジャズは決して、顔をしかめて小難しく聴くためだけの音楽ではありません。このアルバムのように、ミュージシャンたちが心から演奏を楽しみ、観客と一体となって盛り上がる、エンターテインメント性たっぷりの作品もたくさん存在します。

「ちょっとジャズを聴いてみようかな」と思っている初心者の方にこそ、このソウルフルでハッピー、そしてエネルギーに満ち溢れた名盤を強くおすすめします。

ぜひ、お気に入りの飲み物を片手に、1985年のニューヨークのジャズクラブの熱狂を体感してみてくださいね!

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